止める母の声には聞き耳を持たず、彼は駆け出した。

「!?」

事態は彼が思ったよりも重大だった。

血の匂いがして、久光が駆け寄ると、そこに倒れていたのは、2人の遺体だった。

(お館殿!北の方まで!)

彼に戦慄がはしる。

まさか、と嫌な予感がして、久光は姫の部屋まで向かう。

「キャァァァァァァァァ!」

珠寿の悲鳴が、乾いた空間に響き渡った。

(遅かったか!?)