「姫様〜。」

少年は摘んだ花を抱き抱えて、姫と呼ばれたその人に駆け寄る。

「どうか、したの?」

姫君は振り返り、ニコリと微笑んだ。

「見て、これ。摘んできたんです。どうですか?」

「まぁ、可愛いわ。」

姫君は、大きなお邸に住む、立派な身分のお嬢様。
一方、少年は姫君に仕えているだけの、貧乏とは言わないが、あまり裕福ではない。
しかし、身なりは立派だった。

「帰って、珠寿に生けてもらいましょう。」

珠寿は、姫君つきの女房である。