君に想いを伝えたら


校長先生の長いお話も終わり……ようやく解放された私たちはまたクラスへ戻る。



「はぁー終わったね。長かった〜。」



ざわざわする教室内。



「はい。座れ〜!入学式お疲れ様!改めて一年間よろしくな!じゃあ、今日はこれで解散だ。」



先生の言葉でみんなは帰り始めた。



「じゃあ、琉愛!また明日ね〜!」



私に手を振る陽奈。



「うん!また明日ね〜。」



陽奈の後ろ姿を見届け、私は伊織の元へ向かった……。



いや、正しくは向かおうとした。



伊織の周りには何人か集まっていてとても話せる状況ではなかった。



伊織はかっこいい上に明るい性格だから、誰とでもすぐに打ち解けられるんだ。



一緒に帰ろうかな〜なんて思ったけど、さすがに色々噂がたちそうだし、蘭にも悪いかなと思い、1人で帰ることにした。



陽奈は電車通学で、最寄りの駅は私の帰り道と真逆。



だから少し悲しいかな。



外に出るとまだ少し肌寒いけど、日差しは暖かかった。



私は導かれるように桜の木の元へ足を進めていた。



風が吹いて、薄い桃色の花びらたちが一斉に舞う。



その様子は綺麗で、でもどこか儚げだった。