鳩が呑気な事を言っているけど、打てなかったのならそんな音はしないはず。ちらりと見ると、引き金を押しても何も起こらないのを呆然としている透真くんと、両手から煙を放っている鵺がいる。
「何故、俺が持っている銃が偽物なんだ」
呆然としている鵺に、鳩が困った顔で笑う。
「だから言ったじゃん。君のカツ丼に睡眠薬が入っていたってね。その拳銃には煙玉を分解して詰めときました」
カチャ
鳩が鵺に銃口を向け、引き金を引く。
――すると、銃口から火がぼわっと立ち上がった。
「俺のはライターです」
「なんだと」
「因みに、君は改造銃にセーフティレバーなんてわざわざ作ったっすか? 打とうとした悪役に天誅を下すのに、――付ける必要あります?」
鳩の言い分に、鵺が透真くんの拳銃を睨みつける。
「は? セーフティガードってなんだよ。外し方分からねー」
何度もカチカチ引き金を引くが一向に撃てない透真君は頭をガシガシ掻いた後、銃を捨てた。
「捨てていいのか。一発だけ実弾が入っているかもしれないぞ」
「俺はお前に怪我させたり殺したいわけじゃなかった。俺は俺の拳で、お前に分からせてやりたいだけだ」
「俺は、世界征服の為なら拳銃も抜ける。邪魔な奴は『後で』や『いつか』ではない。今、倒す」
丁度二人が拳を振り上げて走りだしたと同時に、大きな雷がまた鳥居に落ちた。それを合図に雨がバケツをひっくり返したかのように振りだして、――それが渡辺君を解放してくれているような気がした。
放り投げられた銃は、二人が走る度に泥で濡れていく。二人から流れ出す純粋で凶悪な黒い忌みを見ながら、私は剣を抜く。こ
の凶悪な二人を野放しにしていたら、きっと世界は壊滅してしまうだろうから。世界のために。妖刀である、秘め百合を振りかざした。
「鵺君と透真君と、お嬢。皆、いろんな香りがして――俺は此処に来てから毎日きっとわくわくしているっす」
「そうよね、きっと私も平凡な日常を求めていたけど、秘め百合を持って暴れても誰も不振がらないこの状況に――すっごくときめいてるわ」
鳩は、秘め百合が何なのか聞かなかった。だから私も、鳩の香りの真理も聞かない。ただ透真くんと鵺が大けがしないように二人で止めに入った。秘め百合を差しても差しても、鵺の闇は払えないけれど、鵺と透真君は殴り合いながら、気付けば泥だらけで笑い合っていた。
「比奈は凄いな」
「何で?」
「人を斬らないで闇を斬る刀は、美しい」
泥だらけで笑い飛ばし、寝ころんだ鵺が私の刀に手を伸ばす。
「あのね、鵺。この刀は、普通の人には見えない妖刀なんだよ」
透真くんは私の鵺の会話に何も言わなかったけれど、ただただ幼馴染として昔も今もじっと見守ってくれている。
「そうか。普通の人が見えないのならば、やはり俺と比奈は特別なのだろうな」
「……あんたも懲りないわね」
もう一度刀を振りかざすと、今度は鵺は握って受け止めた。身体をすり抜けず、受け止められてしまった。
「何故、俺が持っている銃が偽物なんだ」
呆然としている鵺に、鳩が困った顔で笑う。
「だから言ったじゃん。君のカツ丼に睡眠薬が入っていたってね。その拳銃には煙玉を分解して詰めときました」
カチャ
鳩が鵺に銃口を向け、引き金を引く。
――すると、銃口から火がぼわっと立ち上がった。
「俺のはライターです」
「なんだと」
「因みに、君は改造銃にセーフティレバーなんてわざわざ作ったっすか? 打とうとした悪役に天誅を下すのに、――付ける必要あります?」
鳩の言い分に、鵺が透真くんの拳銃を睨みつける。
「は? セーフティガードってなんだよ。外し方分からねー」
何度もカチカチ引き金を引くが一向に撃てない透真君は頭をガシガシ掻いた後、銃を捨てた。
「捨てていいのか。一発だけ実弾が入っているかもしれないぞ」
「俺はお前に怪我させたり殺したいわけじゃなかった。俺は俺の拳で、お前に分からせてやりたいだけだ」
「俺は、世界征服の為なら拳銃も抜ける。邪魔な奴は『後で』や『いつか』ではない。今、倒す」
丁度二人が拳を振り上げて走りだしたと同時に、大きな雷がまた鳥居に落ちた。それを合図に雨がバケツをひっくり返したかのように振りだして、――それが渡辺君を解放してくれているような気がした。
放り投げられた銃は、二人が走る度に泥で濡れていく。二人から流れ出す純粋で凶悪な黒い忌みを見ながら、私は剣を抜く。こ
の凶悪な二人を野放しにしていたら、きっと世界は壊滅してしまうだろうから。世界のために。妖刀である、秘め百合を振りかざした。
「鵺君と透真君と、お嬢。皆、いろんな香りがして――俺は此処に来てから毎日きっとわくわくしているっす」
「そうよね、きっと私も平凡な日常を求めていたけど、秘め百合を持って暴れても誰も不振がらないこの状況に――すっごくときめいてるわ」
鳩は、秘め百合が何なのか聞かなかった。だから私も、鳩の香りの真理も聞かない。ただ透真くんと鵺が大けがしないように二人で止めに入った。秘め百合を差しても差しても、鵺の闇は払えないけれど、鵺と透真君は殴り合いながら、気付けば泥だらけで笑い合っていた。
「比奈は凄いな」
「何で?」
「人を斬らないで闇を斬る刀は、美しい」
泥だらけで笑い飛ばし、寝ころんだ鵺が私の刀に手を伸ばす。
「あのね、鵺。この刀は、普通の人には見えない妖刀なんだよ」
透真くんは私の鵺の会話に何も言わなかったけれど、ただただ幼馴染として昔も今もじっと見守ってくれている。
「そうか。普通の人が見えないのならば、やはり俺と比奈は特別なのだろうな」
「……あんたも懲りないわね」
もう一度刀を振りかざすと、今度は鵺は握って受け止めた。身体をすり抜けず、受け止められてしまった。



