「みんながよんでいるのにしずかなところ。それでいて、両手でも脳でも、声でも耳でも、全てを知ることは不可能な場所」
「え、急に問題? え、えー」
ちょっとだけ考えてから、博識な鳩の言動を思い浮かべて、ある場所が浮かぶ。
「もしかして淡窓図書館かもしれない」
そうだ。なぞなぞの答えは図書館。それで一番日田で大きくて見つけやすい図書館は、あそこしかない。
「重お爺ちゃんありがとう。行ってみる!」
「彼も芽衣子と同じだった。言いたくない、思い出したくない気持ちを抱えている。儂はそれを取りこぼして、今も悔いている」
おじいちゃんが雨をぼんやり見上げながら寂しそうに言う。お爺ちゃんが今、後悔してもそれはやり直しができないことばかり。だから私に言ってくれるんだと思う。鳩が考えていることも、しようとしていることも、駄菓子屋で一攫千金狙っていることも、そもそも何を考えているのか分からないけど。数日の付き合いでも分かる。そんなに悪い奴ではない。怪しいだけで。そんな鳩が一人で行動しちゃうって、それって、鳩の隠された一面を知るチャンスじゃん。
淡窓図書館に到着し、入った途端、ぐらりと眩暈がした。忌みが此処にもいっぱいある。動いているのではなくその場に佇んでいるのだから、別に害はないと分かっているけど、気持ち悪いな。淡窓図書館は、大きく幼児書コーナーと一般書コーナーに分かれていて二階はイベント時以外は入れない。けれど一階だけでも学校のグラウンドぐらいはある広さで、本を読まない私でも探検するだけでも楽しかったりする。
でもその時は、忌みなんて図書館に無かった気がするんだけどなあ。のんびりと歩くふりをしつつ忌みを避けていたら、蛍光ピンクジャージの鳩は一目で分かった。返却コーナーのお姉さんに何か質問し、案内してもらっている。
「何してるの?」
「うっひゃおう!」
お姉さんが居なくなるのを見計らった話しかけると、鳩は一メートルほど上へ飛び上がった。
「何でどんな驚いてるの」
「び、びっくりしたあ。お嬢じゃないっすか。え、ここ図書館ですよ。何で一番本を読まなさそうなお嬢が!」
「しー! 馬鹿っ」
静かな図書館の、しかも平日の昼間。大声でお嬢なんて呼ばれたら、数少ない利用者から注目を浴びるに決まっている。
「重お爺ちゃんが鳩が此処に居るって教えてくれたの」
「へー、なるほど。今日は雨だから駄菓子屋も人が来ないって言うし、ちょっとさっきのあれが気になっちゃって」
「あれ?」
首を傾げていたら、お姉さんが鍵を持って帰ってきた。
「お客様、こちらです」
鳩は、貸出カウンターの裏の事務室へ呼ばれた。
「私も行く!」
「え、急に問題? え、えー」
ちょっとだけ考えてから、博識な鳩の言動を思い浮かべて、ある場所が浮かぶ。
「もしかして淡窓図書館かもしれない」
そうだ。なぞなぞの答えは図書館。それで一番日田で大きくて見つけやすい図書館は、あそこしかない。
「重お爺ちゃんありがとう。行ってみる!」
「彼も芽衣子と同じだった。言いたくない、思い出したくない気持ちを抱えている。儂はそれを取りこぼして、今も悔いている」
おじいちゃんが雨をぼんやり見上げながら寂しそうに言う。お爺ちゃんが今、後悔してもそれはやり直しができないことばかり。だから私に言ってくれるんだと思う。鳩が考えていることも、しようとしていることも、駄菓子屋で一攫千金狙っていることも、そもそも何を考えているのか分からないけど。数日の付き合いでも分かる。そんなに悪い奴ではない。怪しいだけで。そんな鳩が一人で行動しちゃうって、それって、鳩の隠された一面を知るチャンスじゃん。
淡窓図書館に到着し、入った途端、ぐらりと眩暈がした。忌みが此処にもいっぱいある。動いているのではなくその場に佇んでいるのだから、別に害はないと分かっているけど、気持ち悪いな。淡窓図書館は、大きく幼児書コーナーと一般書コーナーに分かれていて二階はイベント時以外は入れない。けれど一階だけでも学校のグラウンドぐらいはある広さで、本を読まない私でも探検するだけでも楽しかったりする。
でもその時は、忌みなんて図書館に無かった気がするんだけどなあ。のんびりと歩くふりをしつつ忌みを避けていたら、蛍光ピンクジャージの鳩は一目で分かった。返却コーナーのお姉さんに何か質問し、案内してもらっている。
「何してるの?」
「うっひゃおう!」
お姉さんが居なくなるのを見計らった話しかけると、鳩は一メートルほど上へ飛び上がった。
「何でどんな驚いてるの」
「び、びっくりしたあ。お嬢じゃないっすか。え、ここ図書館ですよ。何で一番本を読まなさそうなお嬢が!」
「しー! 馬鹿っ」
静かな図書館の、しかも平日の昼間。大声でお嬢なんて呼ばれたら、数少ない利用者から注目を浴びるに決まっている。
「重お爺ちゃんが鳩が此処に居るって教えてくれたの」
「へー、なるほど。今日は雨だから駄菓子屋も人が来ないって言うし、ちょっとさっきのあれが気になっちゃって」
「あれ?」
首を傾げていたら、お姉さんが鍵を持って帰ってきた。
「お客様、こちらです」
鳩は、貸出カウンターの裏の事務室へ呼ばれた。
「私も行く!」



