でも、収穫はあった。福岡の人ならばその事故は有名ってことだ。諌山のお爺ちゃんの結果次第では、こちらも鵺への対応の仕方を考えなければいけない。銃は偽物だとしても、だ。
鵺の態度は些か芝居くさい、それでいて攻撃的な言葉を放つ。少しは自分の今の状況を何とかしなければ、クラスどころか三年の透真君に完全に目を付けられているんだから。
鵺の心配ではなく、透真君の学力で大学に行けないことは分かってるのだから透真君の心配をしている。でもそうだ。
明日、鵺は謹慎から復帰する。クラスの皆の前で、私の事を『お姫様』とか言っちゃった日には、きっともう私の未来はお先真っ黒だ。自分の身を案じるためにも、あの鵺をなんとかしたい!
「えっと、比奈さんでしたっけ。抹茶ができておりますよ」
まるで我が家の様に奥から三分一さんが顔を出す。
「いらない。もう用がないならとっとと帰りたいんだけど」
「奥様をお呼びいたしましょう」
「あー。いい。良いです。良いです。家に帰るだけだから」
適当に傘立てから傘を抜くと、三分一さんが中のお母さんたちと私を交互に見ている。もしかしたらちょっと慌てているのかもしれない。私が帰ると言うのに、出てこない二人に。表情が見えないと言うのも厄介だなって思う。
「物産展、是非に見に来てください。美しく飾りますので」
「うん。頑張ってくださいね」
資料館から一歩出たら、もうバケツをひっくり返したような大雨だったけれど引き返すにも行かず、とぼとぼとお婆ちゃんの家を出る。すると、胸ポケットに入っていた携帯が鳴った。
『豆田町だけ超雨、すげー』
それを送ってきたのは紛れもない、透真君だった。豆田町の上だけモクモクと雲に覆われているなんて変なの。でも、もっと変な事は、家に帰ってから起きていた。
「鳩が帰っていない?」
お婆ちゃんとお爺ちゃんが相撲を見ながら頷く。鳩が家に真っ直ぐに帰っていなかったなんて。鳩って携帯持ってるのかな?
そう言えば連絡取ったことなかったし、今日は連絡先を交換してなかったから鳩がわざわざ迎えに来てくれたんだった。つまり携帯を持たない鳩の行方を捜すのは、私にはなかなか難しいということになる。
「どうせ駄菓子なんて誰も買いに来ないでしょ? 出かけてくるー」
「はいよ、気をつけんしゃい」
「傘忘れずにな」
傘を持って家から出ると、再びバケツをひっくり返った世界だったけれど構わない。鳩が私を出し抜いて何処に行ったのかが気になっていた。
「そう言えば、今日の朝、重爺ちゃんといっぱい話していたような気がする」
自分の家の店を出てからひょいっと隣の花屋を覗く。するとおじいちゃんがお店の中から土砂降りの雨を見ていた。
「重お爺ちゃん、鳩知らない?」
声をかけるが座ったまま眠っているのか返事が無い。
「ねえ、お爺ちゃん―?」
鵺の態度は些か芝居くさい、それでいて攻撃的な言葉を放つ。少しは自分の今の状況を何とかしなければ、クラスどころか三年の透真君に完全に目を付けられているんだから。
鵺の心配ではなく、透真君の学力で大学に行けないことは分かってるのだから透真君の心配をしている。でもそうだ。
明日、鵺は謹慎から復帰する。クラスの皆の前で、私の事を『お姫様』とか言っちゃった日には、きっともう私の未来はお先真っ黒だ。自分の身を案じるためにも、あの鵺をなんとかしたい!
「えっと、比奈さんでしたっけ。抹茶ができておりますよ」
まるで我が家の様に奥から三分一さんが顔を出す。
「いらない。もう用がないならとっとと帰りたいんだけど」
「奥様をお呼びいたしましょう」
「あー。いい。良いです。良いです。家に帰るだけだから」
適当に傘立てから傘を抜くと、三分一さんが中のお母さんたちと私を交互に見ている。もしかしたらちょっと慌てているのかもしれない。私が帰ると言うのに、出てこない二人に。表情が見えないと言うのも厄介だなって思う。
「物産展、是非に見に来てください。美しく飾りますので」
「うん。頑張ってくださいね」
資料館から一歩出たら、もうバケツをひっくり返したような大雨だったけれど引き返すにも行かず、とぼとぼとお婆ちゃんの家を出る。すると、胸ポケットに入っていた携帯が鳴った。
『豆田町だけ超雨、すげー』
それを送ってきたのは紛れもない、透真君だった。豆田町の上だけモクモクと雲に覆われているなんて変なの。でも、もっと変な事は、家に帰ってから起きていた。
「鳩が帰っていない?」
お婆ちゃんとお爺ちゃんが相撲を見ながら頷く。鳩が家に真っ直ぐに帰っていなかったなんて。鳩って携帯持ってるのかな?
そう言えば連絡取ったことなかったし、今日は連絡先を交換してなかったから鳩がわざわざ迎えに来てくれたんだった。つまり携帯を持たない鳩の行方を捜すのは、私にはなかなか難しいということになる。
「どうせ駄菓子なんて誰も買いに来ないでしょ? 出かけてくるー」
「はいよ、気をつけんしゃい」
「傘忘れずにな」
傘を持って家から出ると、再びバケツをひっくり返った世界だったけれど構わない。鳩が私を出し抜いて何処に行ったのかが気になっていた。
「そう言えば、今日の朝、重爺ちゃんといっぱい話していたような気がする」
自分の家の店を出てからひょいっと隣の花屋を覗く。するとおじいちゃんがお店の中から土砂降りの雨を見ていた。
「重お爺ちゃん、鳩知らない?」
声をかけるが座ったまま眠っているのか返事が無い。
「ねえ、お爺ちゃん―?」



