「それは多分、代々、お人形たちに虫がつかないようにお香を焚いていたからお人形に匂いが染みついているんじゃないかしら」
「あー、なるほど。仄かに香る程度っすもんね。確かに」
楽しげにそういうと、米粒一つ残さずに平らげてしまった。凄い食欲だ。
「でも、お嬢の名前も比奈っすよね。何かこう、雛人形の町である豆田町に関係してる感じが素敵っす」
「やめて。鳩の勘は当たるから、本当に嫌だ」
忌みが見える原因がここら辺からあるなら本当にちょっと背筋が怖くなる。すると、
「すいません」
「あ、業者の人だ」
ナイスタイミングで人が現れた。
「あら、大変。それに雨よ」
お天気ではなくいつの間にか空は曇っていた。アスファルトの匂いを強く感じる。そんな中、全く濡れた様子も無く、うちの酒造資料館の入り口に立つスーツ姿の男の人は、物静かに存在感もなく此方の様子を伺っている。
「なかなか狐がお嫁にいけない天気が続きますよね」
「あら、やだ。本当ですわね」
空を見て浮かんだのは、渡辺君だった。渡辺君が透真君に甲子園を目指して頑張ってほしいと言った途端に降りだしたような気がする。凄く嫌な雨を見上げたら、業者の人がコンと笑ったような気がした。
「初めまして。今回のご当地企画の日田地区の担当をさせていただいています。三分(さんぶ)一(いち)です」
コンコンとまた軽く咳をした。それが狐が笑っているかのように不気味だった。五、事件は現場で起こっているが、見えない。
「実に素晴らしいです。珍しい上に、美しい。それでいてなんとも煌びやかで、世界で一点もののような、私でさえ見たことが無いお雛様です」
スラスラとまるで台本があるかのように三分一さんが、お雛様を見ながら言う。けれど、表情が変わらない。
なんか、パソコンに打ち込んだ文章が口からカタカタ零れているだけなんじゃないかなって思う。キツネ目の、銀色のフレームがキラキラ光る、パーマのお兄さん。年齢は不詳。表情は変わらないけど、礼儀正しい感じ。
「三分一さんって、平安貴族みたいな顔してますね」
私が下から見上げながらそう言うと、不思議そうに顔を傾げた。
「それは、のっぺりした顔って意味ですか?」
「あー、なるほど。仄かに香る程度っすもんね。確かに」
楽しげにそういうと、米粒一つ残さずに平らげてしまった。凄い食欲だ。
「でも、お嬢の名前も比奈っすよね。何かこう、雛人形の町である豆田町に関係してる感じが素敵っす」
「やめて。鳩の勘は当たるから、本当に嫌だ」
忌みが見える原因がここら辺からあるなら本当にちょっと背筋が怖くなる。すると、
「すいません」
「あ、業者の人だ」
ナイスタイミングで人が現れた。
「あら、大変。それに雨よ」
お天気ではなくいつの間にか空は曇っていた。アスファルトの匂いを強く感じる。そんな中、全く濡れた様子も無く、うちの酒造資料館の入り口に立つスーツ姿の男の人は、物静かに存在感もなく此方の様子を伺っている。
「なかなか狐がお嫁にいけない天気が続きますよね」
「あら、やだ。本当ですわね」
空を見て浮かんだのは、渡辺君だった。渡辺君が透真君に甲子園を目指して頑張ってほしいと言った途端に降りだしたような気がする。凄く嫌な雨を見上げたら、業者の人がコンと笑ったような気がした。
「初めまして。今回のご当地企画の日田地区の担当をさせていただいています。三分(さんぶ)一(いち)です」
コンコンとまた軽く咳をした。それが狐が笑っているかのように不気味だった。五、事件は現場で起こっているが、見えない。
「実に素晴らしいです。珍しい上に、美しい。それでいてなんとも煌びやかで、世界で一点もののような、私でさえ見たことが無いお雛様です」
スラスラとまるで台本があるかのように三分一さんが、お雛様を見ながら言う。けれど、表情が変わらない。
なんか、パソコンに打ち込んだ文章が口からカタカタ零れているだけなんじゃないかなって思う。キツネ目の、銀色のフレームがキラキラ光る、パーマのお兄さん。年齢は不詳。表情は変わらないけど、礼儀正しい感じ。
「三分一さんって、平安貴族みたいな顔してますね」
私が下から見上げながらそう言うと、不思議そうに顔を傾げた。
「それは、のっぺりした顔って意味ですか?」



