その笑顔は、やっぱりゴールデンレトリバーみたいな大型犬の愛くるしい顔だったのだけれど、あの霧が渡辺くんの何か分からず鳥肌は戻らなかった。
「あいつ、お前と同じクラスか。いじめんなよ」
「苛められるわけないでしょ」
「……そうだけど。あいつ俺に甲子園行って欲しいからって野球部辞めちまってさ」
「はあ? なんで?」
「雨が降るからだと。俺が引退したらまた入りたいって言ってた。チームの皆が受け入れてくれるといいんだけど」
雨男。そんなに天候が彼を苦しめているのだとしたら、同情しかできないけど。
「いたいた。お嬢っ」
考え込む私に、呑気な声が近づいてきた。
「うわ、鳩」
「鳩さーん」
「お昼ご飯、お婆さんの家でちらし寿司作ってるみたいですよ。早くいきましょうっす」
わざわざそんな事を言いに来たのだろうか。笑顔で透真君と喋っていたが、急に飛び上がり周りを見渡しだした。そして、愛海がコンビニの中に居るのに気づいて、透真君と私の後ろへ隠れる。
「やっぱ彼女の匂いでしたか」
「愛海も芸能人が隣で生活してる感覚で騒いでるだけだから、悪気はないのよ?」
「分かってるっす。でもそのうち、俺が駄目駄目人間だってばれちゃうかなって思ったッス」
今も、鳩の過去が分からない現状では結構駄目人間な気がする。19歳にして元ホストの今は駄菓子屋で修行中のニート?
修行中の人ってなんていうんだろう。
「あ、油揚げの匂いもする」
「油揚げなんて誰も今は持っても食べても無いわよ」
「でも匂うッス。昨日とおんなじ匂いだ」
鳩の鼻は、犬より効く。ゴールデンレトリバーより効く。「
油揚げじゃなくて、犬の匂いしなかった?」
「お嬢。俺はね。そんな直接的な匂いにか反応しなくて香りとか珍しい匂いとかね」
鳩が蘊蓄を語り出そうとして、愛海がレジに向かっているのに気付き、一メートルぐらい飛び上がった。
「い、行こうッス。バスで一本だし」
「や、バスはねえ」
「俺が愛海は引きつけておくから行っておけ」
「あいつ、お前と同じクラスか。いじめんなよ」
「苛められるわけないでしょ」
「……そうだけど。あいつ俺に甲子園行って欲しいからって野球部辞めちまってさ」
「はあ? なんで?」
「雨が降るからだと。俺が引退したらまた入りたいって言ってた。チームの皆が受け入れてくれるといいんだけど」
雨男。そんなに天候が彼を苦しめているのだとしたら、同情しかできないけど。
「いたいた。お嬢っ」
考え込む私に、呑気な声が近づいてきた。
「うわ、鳩」
「鳩さーん」
「お昼ご飯、お婆さんの家でちらし寿司作ってるみたいですよ。早くいきましょうっす」
わざわざそんな事を言いに来たのだろうか。笑顔で透真君と喋っていたが、急に飛び上がり周りを見渡しだした。そして、愛海がコンビニの中に居るのに気づいて、透真君と私の後ろへ隠れる。
「やっぱ彼女の匂いでしたか」
「愛海も芸能人が隣で生活してる感覚で騒いでるだけだから、悪気はないのよ?」
「分かってるっす。でもそのうち、俺が駄目駄目人間だってばれちゃうかなって思ったッス」
今も、鳩の過去が分からない現状では結構駄目人間な気がする。19歳にして元ホストの今は駄菓子屋で修行中のニート?
修行中の人ってなんていうんだろう。
「あ、油揚げの匂いもする」
「油揚げなんて誰も今は持っても食べても無いわよ」
「でも匂うッス。昨日とおんなじ匂いだ」
鳩の鼻は、犬より効く。ゴールデンレトリバーより効く。「
油揚げじゃなくて、犬の匂いしなかった?」
「お嬢。俺はね。そんな直接的な匂いにか反応しなくて香りとか珍しい匂いとかね」
鳩が蘊蓄を語り出そうとして、愛海がレジに向かっているのに気付き、一メートルぐらい飛び上がった。
「い、行こうッス。バスで一本だし」
「や、バスはねえ」
「俺が愛海は引きつけておくから行っておけ」



