三時間目で終わり、のろのろと帰る中、愛海もコンビニにお昼ご飯を買いに出るらしくコンビニまで一緒に帰った。愛海は部活の大会前なので、昼からは10キロほど走るらしい。
「でもね、中学二年ぐらいだったかな。どっかの神社で練習してた時に転がったボールを追って、入ったら行けない林に入ってさ、それからだよ。何か楽しいイベントにあいつが参加すると必ず雨になるの」
「愛海までそんな、ばかみたいな話」
「本当よ? さっきまで晴れだったのに、急に雲が太陽を隠しちゃうんだから」
「そーゆうのってずっと言われてきた渡辺君ってきっと辛いんじゃない?」
「……比奈」
「私も、誰も信じてくれないから開き直ってたけど、別に病弱じゃないんだよ。でも証拠を見せてあげられないの。結構辛い」
黒い霧に当たると気持ち悪くて、全身の血を奪われるように貧血になってしまう。だから、登校班で一緒の道を歩くのが辛い。避けたいのに、ちょっとでも班から飛び出ると怒られる。でもあの霧にこれ以上触れたくない。
「なんか、昔の自分がそこに居た。だからつい、庇っちゃった。そうか、私、庇ってほしかったんだよね」
目に見えない敵と私が戦っている。それを説明してもきっと信じるなんて無理だから言えない。渡辺君も何かある度に自分のせいでと傷つかなきゃいけなかった。なんて理不尽なんだろうか。
「お、渡辺。元気か?」
丁度話をしていた私たちの目の前のコンビニで、透真君が渡辺君に話しかけていた。うわあ……。渡辺君の背中に黒い靄がいっぱい。近づきたくないな。
「へえ、お前がクラス委員っ いいぞいいぞ、似合ってる」
透真君に褒められた渡辺君は、嬉しそうに頬をポリポリ掻いているのが見えた。近づきたくないあの黒い靄が、透真くんのおかげで薄らいでいくのが分かる。あの黒い靄は人の気持ちなのだろうか。
分からないけど透真君には帽子を返さないといけない役目があるのだけど、今日はスルーしてしまいたいのが本音だった。このまま愛海だけコンビニへ入ってもらい私は帰ろうとこそこそ背を向ける。
「お、副委員長!」
駄目だった。速攻で透真君に見つかった。「あっれ? 透真くんではないでしょうか。ほい、こちらです」
何事もなかったように帽子を返すと、頭をこつんと軽く叩かれた。
「朝一で持ってこい」
「忙しかったんだよ」
「寝坊だろ」
「ち、違うよ」
私たちの他愛のない会話に過ぎなかったのに、なぜか渡辺君の笑顔がもやもやと霧に包まれだした気がした。
え、ってか。渡辺君、もしかして私が嫌い?
鵺のあの黒い霧も私への憎悪とか?びっくりして透真君の隣に隠れると、何故だが渡辺君の周りの霧は晴れて、我に返ったようだった。
「俺、失礼します。透真部長、絶対甲子園行って下さいね」
「でもね、中学二年ぐらいだったかな。どっかの神社で練習してた時に転がったボールを追って、入ったら行けない林に入ってさ、それからだよ。何か楽しいイベントにあいつが参加すると必ず雨になるの」
「愛海までそんな、ばかみたいな話」
「本当よ? さっきまで晴れだったのに、急に雲が太陽を隠しちゃうんだから」
「そーゆうのってずっと言われてきた渡辺君ってきっと辛いんじゃない?」
「……比奈」
「私も、誰も信じてくれないから開き直ってたけど、別に病弱じゃないんだよ。でも証拠を見せてあげられないの。結構辛い」
黒い霧に当たると気持ち悪くて、全身の血を奪われるように貧血になってしまう。だから、登校班で一緒の道を歩くのが辛い。避けたいのに、ちょっとでも班から飛び出ると怒られる。でもあの霧にこれ以上触れたくない。
「なんか、昔の自分がそこに居た。だからつい、庇っちゃった。そうか、私、庇ってほしかったんだよね」
目に見えない敵と私が戦っている。それを説明してもきっと信じるなんて無理だから言えない。渡辺君も何かある度に自分のせいでと傷つかなきゃいけなかった。なんて理不尽なんだろうか。
「お、渡辺。元気か?」
丁度話をしていた私たちの目の前のコンビニで、透真君が渡辺君に話しかけていた。うわあ……。渡辺君の背中に黒い靄がいっぱい。近づきたくないな。
「へえ、お前がクラス委員っ いいぞいいぞ、似合ってる」
透真君に褒められた渡辺君は、嬉しそうに頬をポリポリ掻いているのが見えた。近づきたくないあの黒い靄が、透真くんのおかげで薄らいでいくのが分かる。あの黒い靄は人の気持ちなのだろうか。
分からないけど透真君には帽子を返さないといけない役目があるのだけど、今日はスルーしてしまいたいのが本音だった。このまま愛海だけコンビニへ入ってもらい私は帰ろうとこそこそ背を向ける。
「お、副委員長!」
駄目だった。速攻で透真君に見つかった。「あっれ? 透真くんではないでしょうか。ほい、こちらです」
何事もなかったように帽子を返すと、頭をこつんと軽く叩かれた。
「朝一で持ってこい」
「忙しかったんだよ」
「寝坊だろ」
「ち、違うよ」
私たちの他愛のない会話に過ぎなかったのに、なぜか渡辺君の笑顔がもやもやと霧に包まれだした気がした。
え、ってか。渡辺君、もしかして私が嫌い?
鵺のあの黒い霧も私への憎悪とか?びっくりして透真君の隣に隠れると、何故だが渡辺君の周りの霧は晴れて、我に返ったようだった。
「俺、失礼します。透真部長、絶対甲子園行って下さいね」



