「うん。あーゆう神様が居る所は平気なんじゃない?」
 適当に言いながら、グラタン皿の半分を一気に口の中へ詰め込んだ。これは、軽く二杯は食べられるぞ。
「そうそう、あのねえ、比奈に相談なんだけど。賄賂のお煎餅を昨日ほとんど食べた貴方に決めて欲しいんだけど」
「うわ。すっごくプレッシャーかけてきた。何?」
「やっぱり福岡の物産展で、雛人形を展示してほしいって言われてね。なんかそんな悪い人でもなさそうだし。知ってる人も出店するしどうしようかなって」
「ふーん」
 お母さんのこの手の話は相談ではなくて同意してほしいのを私は知っている。同意しないと次の日のおかずが一品減るのも知っている。
「でも、うちの雛人形は200年近いものだから運送中に壊れたら怖いなって思って。そうしたらお婆ちゃんが、展示したことない雛人形があるっていうの。そっちなら状態も良いって」
「ふーん。だったらそれでいいじゃん。他の雛人形はどこのが展示されるの?」
「甘味屋さんと呉服屋さんね。でもどこもお内裏様とお雛様二対だけみたいなのよ。だからうちに全部貸してくれって。補償するし保険にも入るって」
「じゃあ問題ないんじゃない?」
それよりおかわりが欲しい。グラタン皿を渡すと、スタンバイしていた二皿目が渡された。「うーん。でもちょっと変わった雛人形だから、業者さんが来たら比奈も一緒に見てくれない?」
「いいよ」
 面倒くさいから、私が見て決まるならどうでもいい。「はいはいはーい! 俺も見たいっす! 雛人形見てみたいっす」
「うっわ。もう帰ってきたの」