慌てて帽子を隠したけれど、鳩は障子を開けようとはしない。「何?」
「そろそろ、俺も限界っすよ!」
どうやら愛海のことみたいだ。「愛海まだ帰らないって?」
「泊まるとか言い出してます。ヘルプ ミー」
「……しょうがない」
泊まるとなれば私の部屋だが、この泥棒が入った後の様な汚い部屋に奴は泊まりたがらないだろう。意外と綺麗好きだし。
「俺、さっき愛海ちゃんに腕相撲負けたっすよ」
「分かる。鳩ってそんな感じ」
「お嬢……」
慰めて欲しそうな鳩に優しく言葉をかけてやるが逆に泣き出してしまった。テンションが疲れる男だ。居間に戻ると、愛海が自分のとなりにぴったりと座布団をよせて色違いのマグカップを置き、鳩の帰りを待っていた。
日田に娯楽が無さ過ぎるせいで彼女は此処まで暴走してしまったのか。私には愛海の暴走は面白いが限界が見えてこない。
「あんた、私の部屋は今、泥棒に入られたので泊まれないよ」
「えー。去年もほぼ毎日泥棒に入られてたじゃん」
「そうなの。もう盗むものなんて私の心だけなのに」
「それだけは要らないんだろうね」
「帰れ」
「じゃあ鳩君、愛海ちゃん送ってもらえるかしら。パパもお爺ちゃんもお酒飲んじゃったし」
「いいっすよ。ジャージ羽織ってきます」
「じゃあ帰ります」
ころっと態度を変えた愛海に脱力した。こーゆーさっぱりとした奴だからこそ私と馬が合うんだろう。よっこいしょと炬燵に潜れば、お母さんが私の分のご飯を持って来てくれた。焼きカレーの中心の卵が半熟ではなく堅くなってしまっていることに、泣けた。これは今日最大の悲劇だ。
「愛海ちゃん、お待たせ。家ってどこ?」
「田島町なんで、ちょっと距離あるんですう」
「じゃあ家まで送るっすね」
鳩のスマートなエスコートも文句なしだったようだ。それもそのはず。送りオオカミであるホスト鳩にとってはそれぐらい当り前なのだ。
「菖さん、何の用事だったの?」
「あ。うん。今日、帰り道で鳥居に雷が落ちた時に雨宿りしてたから大丈夫かって心配してくれたみたい」
長年、偽りの病弱美少女を演じているせいで、嘘が上手になった。これは褒められることなのか分からないが、私の生き抜く技だと思うことにする。遅刻する理由は上手く嘘つけないけど。
「そうなの。でも鳥居の前を通ったけど、壊れてなかったわね」
「そろそろ、俺も限界っすよ!」
どうやら愛海のことみたいだ。「愛海まだ帰らないって?」
「泊まるとか言い出してます。ヘルプ ミー」
「……しょうがない」
泊まるとなれば私の部屋だが、この泥棒が入った後の様な汚い部屋に奴は泊まりたがらないだろう。意外と綺麗好きだし。
「俺、さっき愛海ちゃんに腕相撲負けたっすよ」
「分かる。鳩ってそんな感じ」
「お嬢……」
慰めて欲しそうな鳩に優しく言葉をかけてやるが逆に泣き出してしまった。テンションが疲れる男だ。居間に戻ると、愛海が自分のとなりにぴったりと座布団をよせて色違いのマグカップを置き、鳩の帰りを待っていた。
日田に娯楽が無さ過ぎるせいで彼女は此処まで暴走してしまったのか。私には愛海の暴走は面白いが限界が見えてこない。
「あんた、私の部屋は今、泥棒に入られたので泊まれないよ」
「えー。去年もほぼ毎日泥棒に入られてたじゃん」
「そうなの。もう盗むものなんて私の心だけなのに」
「それだけは要らないんだろうね」
「帰れ」
「じゃあ鳩君、愛海ちゃん送ってもらえるかしら。パパもお爺ちゃんもお酒飲んじゃったし」
「いいっすよ。ジャージ羽織ってきます」
「じゃあ帰ります」
ころっと態度を変えた愛海に脱力した。こーゆーさっぱりとした奴だからこそ私と馬が合うんだろう。よっこいしょと炬燵に潜れば、お母さんが私の分のご飯を持って来てくれた。焼きカレーの中心の卵が半熟ではなく堅くなってしまっていることに、泣けた。これは今日最大の悲劇だ。
「愛海ちゃん、お待たせ。家ってどこ?」
「田島町なんで、ちょっと距離あるんですう」
「じゃあ家まで送るっすね」
鳩のスマートなエスコートも文句なしだったようだ。それもそのはず。送りオオカミであるホスト鳩にとってはそれぐらい当り前なのだ。
「菖さん、何の用事だったの?」
「あ。うん。今日、帰り道で鳥居に雷が落ちた時に雨宿りしてたから大丈夫かって心配してくれたみたい」
長年、偽りの病弱美少女を演じているせいで、嘘が上手になった。これは褒められることなのか分からないが、私の生き抜く技だと思うことにする。遅刻する理由は上手く嘘つけないけど。
「そうなの。でも鳥居の前を通ったけど、壊れてなかったわね」



