「鵺。お前にこの刀は見えるか」
「刀? はっ」
 失笑する鵺だが鳩は笑わない。私だけが得意気に笑っている。
「私には見える。お前の考えている事がイカスミパスタより真っ黒な事を」
 歯が黒くなると噂を聞き食べた事が無かったけれど、私は鵺に刀を振り上げた。その瞬間、足音もトテンと小さく地面に着地するだけですんだ。私がブロック塀に飛び乗るように、写真館の二階へと続く手すりに飛び乗り、そのまま刀を振り上げたまま飛び乗りたのだ。
 鵺の身体を擦り抜けていく刀。刀はただ黒い靄を斬って消滅させていく。鵺は目を見開き、膝を着いた。
「今、何をした?」
「さぁね」
 私も鵺ぐらい真っ黒な奴なら本当に半分に斬れたらどうしようか不安がなくなかった訳じゃないけど。それでも黒い靄ぐらいなら消したかった。でも、消滅した黒い靄がまたもやもやと身体から放たれる。こいつの『忌み』は根深いらしい。それでいて、目には見えないからややこしい。