「きゃあ!」
腕を掴まれたみかどは、岳理に後ろから抱き締められるように、階段に倒れ込んでしまった。
「――はぁっお、前……」
「ううっは、離して下さい」
じたばた見苦しく暴れると、岳理は更に強く抱き締める。
「離せるワケないだろ」
落ち着いてきた岳理は、怒ったような心配した声で言う。
「泣いてるお前を、離せるワケ、……ないだろ」
ギュウッと抱き締める腕が強くなり、みかどは嗚咽を隠すのを止めました。岳理さんの顔を一目見たら、安心してみかどは涙が溢れてしまっっていた。自分でも気づかないうちに……。「か、帰りますっ」
「往生際が悪ぃな」
岳理は呆れた様子で笑うと、ボソッと耳元で言った。
「鐘の音で帰るとか、お前はシンデレラか」
鐘の音を聞いて、石垣の階段を慌てて降りるシンデレラなんて、いません。階段途中で、しばし無言のまま。座って後ろから抱き締められる異様な状況だが、岳理は離す素振りはない。どうにか、状況を打破するべく会話の糸口をみかどは探す。
「――みかど」
「名前呼ばないで下さい……うぅ」
岳理と一緒に居ると、怖いし、緊張するし、苦しいのに……。今はとても、みかどは安心していた。
「お前、俺に会いに来たんだろ」
そう言われて、再び全身の血が一瞬で沸騰していく。
「違います! 大はずれです!」
「お前、うるさい」
首筋を今、噛まれ、みかどは思考が停止した。それに微かに髭も当たるし、シャンプーの良い香りもする。
「うわぁぁぁんっは、離して下さい! か、噛まないで下さいぃいう」
もう、限界だった。
「う」
岳理が聞き返してくれたと同時に糸が切れたように緊張が溶け、泣き出しった。
「うえぇえーん」
「色気のない泣き方だな……」
やはり岳理は呆れているのか。それから、みかどが泣き止むまで、ずっと岳理は後ろから抱き締めていた。落ち着いてきたら、タオルを渡されたので鼻水やら涙を拭くと、クッと笑われた。
――お兄さんの過去。
――義母との関係。
全部、拙く、言葉に詰まりながらも話すと、岳理はずっと黙って聞いていた。
「じ、自分が恥ずかしいです……でも、この先もお兄さんは、岳理さんを忘れて、笑って生きるのも変だし嫌なんです」
そう言うと、岳理は髪をすくい上げ、指先で遊び出した。
「だったら、答えは出てるだろ」
「うぅ……」
「別に、みかどは恥じる事ねーよ。時間が欲しいとか甘えてる鳴海に問題があんだよ」
「で、も、でもっ」
「お前、もう喋るな」
また泣き出したみかどに、タオルを押し付ける。本当に、岳理の優しさは分かりづらいです。
「すみません、急に押し掛けて」
「全くだよ」



