カフェ『アルジャーノン』の、お兄さん☆



やはり、全てを見透かしているかのように、余裕を浮かべた微笑みだった。そして店長の頬に手を伸ばす。店長も、麗子をまた抱き締めると、今生の別れかのように寂しそうな表情を浮かべました。2人は、ずっと抱き締めあいながら、何か話をしているので邪魔しないよう車の後ろへ乗り込んだ。カフェの中に溢れたお土産を、冷蔵庫や持って帰るものや、色々分けて片付けなければいけないけれど、

今はこの人と話がしたいと。お兄さんは、リムジンが消えるまでずっと手を振っていた。名残惜しげに、見てる此方が切なくなるような、眼差しで。
 みかどが帰る頃にはパタンと、ドアが閉まっている。簡単に、閉まる。その瞬間から、店長の世界からみかどは消える。次の月曜日まで、消える。それは、寂しくて悲しい現実。
 明日、明日全て真実を聞いたとして、この狂った日常を非日常に変えれるだろうか。変えたいから、変えて良いのだろうか。全ては麗子との話をしてから、始まる。


 着いた先は、某高級ホテル。そのまま最上階のスィートルームへ一直線で、そのまま麗子は落ちつきなく花をテーブルに広げだした。

「奥様、お飲み物は」

「――ありがとう。下がってよろしいですよ」
 麗子は、此方を見る事なくそう言った。花の茎を切り、四方から眺めると、花瓶へと花を差していく。
「ごめんなさいね。おかけになって頂戴」
 座ると同時に、先ほどの人がクッキーと紅茶を持って現れる。

「では、ロビーで待機しております」
 そう深々と御辞儀し、足早に去って行った。
パチン……パチン……
 花を切る音が、緊張を更に増幅させていく。

「――落ち着かせようと、花を活けていたら止まらなくて……。最後までやってもよろしいかしら」
 そう麗子が言うので、みかどは何度も何度も頷いた。紅茶を飲む手がカタカタと震えてしまいます。

「何から話したらよろしいかしら 鳴海さんの事は、他言するのは初めてなのよ」
「あっ」
 そう言った後、管理人さんは花を1つ持ち上げると、茎を切り始めた。
「飾る為に摘まれたのが、真絢さんだとしたら、鳴海さんは、詰まれないように隠されたお花」

 切った花をまた花瓶に戻すと、まだ納得できなさそうではあるが、微かに頷いた。そして、漸くみかどを見た。慈愛が感じられる、包み込むような優しい瞳で。

「貴方の義母の真絢さんと鳴海さんは、本当の姉弟ですのよ」

 くしゃくしゃと、切った茎を新聞紙ごと折りたたんでいく。
「長い長い昔話は、あの歪んだ愛情が始まりなの」

 そう言うが、みかどの頭は追いつかない。全身が痺れて、重くて、フワフワして、金縛りにあって。体が自分のものではないみたいだった。
「ど、して……私なんかに」
 

教えてくださるんですか――…
 そう全て言う前に、震えて声は音にならなかった。