「真っ直ぐ行って突き当たり左」
なんともふてぶてしい表情の岳理を睨みつけながら、適当に御礼を言ってみかどは立ち上がる。
やっぱりトイレ行くふりして帰ってしまおうか。そんな衝動に駆られるが、この山のてっぺんの寺から一人で駅まで出るのは骨が折れてしまう。とぼとぼお手洗いを借りて廊下に出ると、ある部屋から物音がし、誰かが飛び出して行くのが見えた。
「大丈夫ですか」
振り返っってみると住職さんの格好をした岳理 いや、良く見れば、岳理が少し渋く老けた感じの方だった。
「もしや、岳理が連れ込んだかな」
「はい! お邪魔してます! お手洗いをお借りしました!」
「そうですか。岳理の父親でございます。岳理がいつもご迷惑をおかけしております。そこに差し入れを置いていますので」
住職さんは爽やかに笑うと、何故か全力で逃げていった。岳理より表情豊かで素敵いうか、岳理も喜怒哀楽を出してくれたら、もっと。
そんなことを思いながら、部屋を覗くと、こんな日本風の作りの家なのに、この部屋だけフローリングだった。物は少なく、ベッドと机のみ。眠るだけの部屋みたいだが机には、三台のパソコンとモニターがあります。そして、何故か日本酒らしき瓶が2本。持ち上げて確認しようとすると、後ろで物音がした。
「……此処、俺の部屋」
襖に背もたれし、腕を組んでいる岳理さんがた。
「みかどの事だから、迷子になってると思った」
「探しに来てくれたのですか」
「それか、逃げ出したとか」
ビクッと体を揺らして、肯定する。岳理は深い溜め息を吐いて近づいいく。みかどは怖いと思った。そばに来られると、身構えてしまうと。ちょっと、距離を開けつつ机の上のお酒を手渡す。
「こ、これ、住職さんから差し入れみたいです」
「親父が」
お酒を受け取ると、岳理の顔色が変わっていく。
「あんの、くそじじい」
お酒を持って飛び出そうとすると、「あ、此処に居たんだ」と、リヒトとトールも入って来た。
「お前ら、俺の『仕事部屋』に勝手に入んな」
「へー、此処で仕事してんの」
2人は遠慮せずに中に入って、きょろきょろ、ペタペタ触り出した。
「そういえば、岳理さんのお仕事って……」
来れば分かるって言っていたが、そう尋ねると、変わりに2人が答えてくれた。
「パソコンで、檀家の法事予定や行事の予約とか管理してるんだよ」
「孔礼寺のHPとか見た事ないあれも岳リンが作ってるよ」
「あぁ! いつぞや弟がHP見てました!」
確か、室町時代から続く云々って書かれてたのを覚えている。後から入って来たドラガンも、物知り顔で口を出して来た。
「T大の理学部数学科じゃろ。それぐらい簡単にできそうじゃな」
「だから、ばっりばりの文系の葉瀬川さんはこのシステム管理はできないんだよ」
岳理が舌打ちしながら説明してくれたが、置かれた酒の名前を見て固まるのが、四人の目にはっきりと映った。。ドラガンがその日本酒を手に取る。そしてお酒のラベルを見て、動きを止める。



