「お前のろくでもない親と一緒にすんなよ」
そう言って、隣に座るように花壇をトントン叩かれた。
警戒して、向かい側の花壇に座ると、ちょっと機嫌が悪くなるが気ににしない。
「ムード無ぇやつ」
ムードなんて入りませんっと両者睨み合い、と思いきや、岳理は冷たく睨んではいなかった。寧ろ、その逆だ。
「あんたは黙って我慢ばっか。鳴海は周りが我慢ばっか。全然似合わないって思ったし、みかどはもっと周りに頼ればいいのに、要領悪くて苛々する」
「俺もおじさんも、あんなババアぐらい怖くもねぇし対応できる。お前は我慢して黙ってるから向こうが調子乗るんだ。手を伸ばせば、助けてくれるヤツはいっぱい居るのに」
あんな、馬鹿な父親の影にいつまでも怯えやがって、と、岳理さんは、心配そうな優しい瞳で私を見ていました。そんな表情を見せるのは初めてだった。
「鳴海はみかどの良い所を知らない。俺は、知ってる。鳴海の為に俺に水をかけたみかどの気持ちは――俺だけが知っている」
真っ直ぐに、射抜かれそうなほど真っ直ぐに。
「知ってるよ」
みかどを捕らえて、離さない。それは、
みかどを想っての岳理の優しさ。みかども岳理の優しい所は誰より知っているつもりだ。でも、この雰囲気はとても、居心地が悪い。うまく息が吸えなくて苦しいのだ。いつもの岳理の方が、まだ安心できるのにが、本音だった。
「う、うろ覚えですが、『温室に咲く花は、冷たい雨を知らない』みたいな歌詞があるんです」
こんな綺麗な温室に居れば、確かに冷たい雨は知らないかもしれない。
「けれど、お兄さんは違うと思います。冷たい雨に弱って、温室に逃げ込んだだけで、だから、――だから、もう温室から出ても、大丈夫だと思うんです」
「1つだけ」
「えっ」
素早く隣に来られ身構える隙も無く、顔を近づけられた。
「否定しないでまず受け止めるみかどの考え方、結構救われた」
俺だけが知る、あんたの良い所っていっぱいあるな、そう、耳元で囁かれる。
(ど、どどどう言う意味なんだろっ)
胸が熱くなり、鼓動が痛いが全く自分で操作できずみかどは戸惑う。甘ったるくて苦しく自分の感覚が、変。変で焦っている。
「どうすんの まだ見る」
岳理の、けだるそうに髪を掻きあげる仕草が、何故か色気を田が酔わせ視線を逸らした。
「か、帰る」
帰って冷水でも頭から浴びたい気分に駆られている。一秒でも早く、此処から逃げ出したい!。
「じゃ、送る」
「良いです! 結構です! 間に合ってます!」
立ち上がって、じりじり後ずさると、溜め息を吐かれた。
「――怖がるなよ」



