「えっ」
「そんなに悩むって事は岳理さん」
流石、千景は鋭い。
「お家に行くのはデートなの」
最大級の私の悩みに、千景は妖しく笑った。
「いっぱい悩めばいいわよ」
答えが出ない悩みは、人に答えを聞くべきでは、ないらしい。悩まなければ、考える事を止められて、真実には辿り着かない。
「でも、下心、あるのですよ」
「え! あるの」
驚く千景に頷く。
「アルジャーノンの仲間を見せてもらいたいから」
その瞬間、千景のキラキラ妖しく光っていた瞳は、豆粒みたいに小さくなった。
「それに、私、お……」
フッと脳裏にあの優しい笑顔が浮かぶ。長い睫毛も、サラサラで柔らかそうな髪も、腕を掴む、力強さも。
「……好きな人、いるのです」
「みかど」
「こんな、後ろ向きで可愛くない私か、好きになるなんて、おこがましい……から。努力しなきゃ。心も強く綺麗に、……外見も中学生に見られないように」
好きになるって、ふわふわして、ユラユラして、胸が熱くなる。そして、胸が苦しくて痛くて、……自覚がない時より苦しい。昨日、岳理の前で口にして自覚した思いはもう逃げられない。
「立ち話で聞く話じゃ、なかったわね」
「千景ちゃん……」
「あのバカで記憶喪失の貧乏軟弱男」
相変わらず、酷い言い草だ。
「自由になれたら、みかどの思いも気づけるのに、ね」
『花が咲かないサボテンなんて、要らなーい』
アルジャーノンは何十年も待ち続ければ、花は咲く。だが、臆病なみかどは自分で変わらない限り、花なんて咲けない。
『お前にはがっかりさせられる』
否定、しかされなかった。否定、しか知らなかった。
『みかどちゃん』
真っ暗でドロドロした感情を、店長の笑顔は、優しく消し去ってくれる。
『土日は、外に出られない、からー……』
光をくれた、人。あなたの事が知りたい。それが、どんなに辛い過去だとしても。全てを知った上で店長が好きだと自信を持って言いたかった。
「おい」
(それってやっぱり我が儘なのかな)
「みかどっ」
「ひゃっ!」
高校の校門前には、ツヤツヤの青いスポーツカーがあった。
「どこに行く気だ」
みかどが踵を返した瞬間、車の中の人と思い切り目が合う。
「うっわ。外車だわ」
下校中の聖マリア女学院の生徒が青いスポーツカーに注目している。みかどは先生が居ないことを確認して車までダッシュした。
「そんなに悩むって事は岳理さん」
流石、千景は鋭い。
「お家に行くのはデートなの」
最大級の私の悩みに、千景は妖しく笑った。
「いっぱい悩めばいいわよ」
答えが出ない悩みは、人に答えを聞くべきでは、ないらしい。悩まなければ、考える事を止められて、真実には辿り着かない。
「でも、下心、あるのですよ」
「え! あるの」
驚く千景に頷く。
「アルジャーノンの仲間を見せてもらいたいから」
その瞬間、千景のキラキラ妖しく光っていた瞳は、豆粒みたいに小さくなった。
「それに、私、お……」
フッと脳裏にあの優しい笑顔が浮かぶ。長い睫毛も、サラサラで柔らかそうな髪も、腕を掴む、力強さも。
「……好きな人、いるのです」
「みかど」
「こんな、後ろ向きで可愛くない私か、好きになるなんて、おこがましい……から。努力しなきゃ。心も強く綺麗に、……外見も中学生に見られないように」
好きになるって、ふわふわして、ユラユラして、胸が熱くなる。そして、胸が苦しくて痛くて、……自覚がない時より苦しい。昨日、岳理の前で口にして自覚した思いはもう逃げられない。
「立ち話で聞く話じゃ、なかったわね」
「千景ちゃん……」
「あのバカで記憶喪失の貧乏軟弱男」
相変わらず、酷い言い草だ。
「自由になれたら、みかどの思いも気づけるのに、ね」
『花が咲かないサボテンなんて、要らなーい』
アルジャーノンは何十年も待ち続ければ、花は咲く。だが、臆病なみかどは自分で変わらない限り、花なんて咲けない。
『お前にはがっかりさせられる』
否定、しかされなかった。否定、しか知らなかった。
『みかどちゃん』
真っ暗でドロドロした感情を、店長の笑顔は、優しく消し去ってくれる。
『土日は、外に出られない、からー……』
光をくれた、人。あなたの事が知りたい。それが、どんなに辛い過去だとしても。全てを知った上で店長が好きだと自信を持って言いたかった。
「おい」
(それってやっぱり我が儘なのかな)
「みかどっ」
「ひゃっ!」
高校の校門前には、ツヤツヤの青いスポーツカーがあった。
「どこに行く気だ」
みかどが踵を返した瞬間、車の中の人と思い切り目が合う。
「うっわ。外車だわ」
下校中の聖マリア女学院の生徒が青いスポーツカーに注目している。みかどは先生が居ないことを確認して車までダッシュした。



