「それって、俺が性格悪いからか、性格が歪んでるからかと思ってたけど」
タコウインナーを眺めながら、岳理は続けた。
「こんな六畳で、家族3人で住んでたんだよなって」
カレーや納豆の話も、生えている食べ物にも詳しかったけれど……でも。昨日、おにぎりを見つめる店長は、確かに少しおかしかった。
「そんな過去にまだ、縛り付けられてんのとフラッシュバックって、――どちらが鳴海にとって悪いわけ」
そう言って、床を強く叩いた。
「俺、鳴海の為にこの四年近く我慢してきたけど、さ。なんか、馬鹿らしい」
そう言って、立ち上がった。
岳理は、202号室側の壁を睨みつけた。そして、壁を、――蹴り始めたのだ。
「なっ!やめっ、止めて下さい!」
みかどが止めても、岳理は構わずに壁を蹴り続ける。
「何するんですか! 駄目っ駄目です!」
隣は、物音一つしないけれど、店長は居る。まだ、全て分かってないのに、力任せに刺激するなんて。とっさに、テーブルの上のコップを掴む。
「出てこいよ! なる――…」
バシャッという音と共に、岳理の動きが止まる。コップにお茶を注ぐと、止まっている岳理に、再度かけた。手が震えて、コップからお茶がこぼれている。――いや、全身が震えていた。「――うぅっ……ひっく」
震えて上手く、コップが握れずに、ゆっくり床へ落ちていく。
「気持ち、……は、わかりっまっ……。でもっ……でもっ!」
嗚咽が邪魔をして、言葉が吐けないけれど、苦しいけれど、岳理を止めたくて言葉を吐き出す。
「駄、目です。お兄さんを、いじめたら、駄目なん、です……」
部屋に閉じこもってる店長は、何かから逃げて隠れてる、震えた子どもみたいに思えたから。――まだ、その場所を、壊して欲しくなかった。
嗚咽で何度も何度も、言葉に躓きながらも、涙で声がかすれながらも、これ、だけは伝えたかった。
「私も……私も……」
優しく、て。表情がくるくる変わって、いつも一生懸命で、お魚型ビスケットの良い匂いがして、食べ物に詳しい、天然な、変な被りモノばかり被る店長を思っている。
「お、兄さんが……好きだから――……」
言わない方が苦しいって思ってた。けれど、言った方が苦しかった。本当の店長は、隣に居るのに。私は本当の店長から逃げているくせに、そんな簡単にその言葉を吐く、。
うずくまり、茫然としていたら、ゆっくりと、部屋のドアが開いた。
「うるさいんだけど、2人とも……」
それは、漫画を片手にした葉瀬川だった。
「あーあ、何やってんのー」
お茶で濡れた床を見て、呑気に言った。



