カフェ『アルジャーノン』の、お兄さん☆



「おいっ姉ちゃん!」
「あ、違うからね、岳理さんは」
 慌てて岳理を庇おうとすると、腕を捕まえられた。
「鳴海さんが倒れたぞ!」
 

皇汰に腕を引っ張られ、大急ぎで帰った。帰ると、庭で草むしりしているのは葉瀬川さんだけだった。他の人たちは、『close』がかけられたカフェの中に居るみたいだ。

「あ……あの、一体何が」
 恐る恐る聞くと、葉瀬川はゆらりと立ち上がり、雑草の中を指差した。
「あれ。あれ見たら、倒れた」
 指差した方向を辿ると、雑草が刈られた奥に、土が盛っている場所があった。子どもが作った、砂の山のような。
「何かのお墓みたいに見えない ペットとか」
そう言って、4個目のゴミ袋を満タンにした。

「――お姉さんとか」
「はぁ!」
 皇汰が聞き返すと、アンニュイに葉瀬川は応える。
「だって、私は鳴海んのお姉さん、見た事ないし。昔よく、ここら辺夜中に子どもが泣く声が聞こえてたらしいし。鳴海んの泣き声かな、お姉さんの泣き声かな」
「はぁ~せぇ~が~わ~さぁぁぁん~~」
 淡々と話していた葉瀬川に、地響きのような低い声で怒鳴ったのは――千景だった。


「鳴海さんの姉は、亡くなったっておばあちゃんから聞いてるの。変な話は止めて」
「本当に― 孔礼寺には鳴海んの母親のお墓しか無いよー」
「葉瀬川さん、うるさいです。みかど、気にしないで入って」
 ガルル状態の千景ちは葉瀬川を睨みつけながら言った。みかども慌てて入ったのであろう皆の泥だらけの靴の後を掃きながわ中へ向かう。
「みかどちゃん、おかえり」

やや小さめな声でリヒトとトールが声をかけてくれた。みかども挨拶もそこそこに店長の元へ駆け寄った。場違いなピンクの枕とピンクの布団で眠る、店長。険しい顔ではなく、安らかなのに少し安心した。気持ち良さそうだ。

「私が、お庭を草むしりしたいとか言ったせいです……」
 店長の布団をかけ直す手が震えてしまった。

「みかどちゃんは、何も悪くないでしょ」
 双子らしく、美しい声まで揃うがみかどは首を振った。
「でもお詫びに、フラッシュバックが起こらないぐらい、綺麗にしたいと思います」
「みかどちゃんっ」
 皆の制止を背中に飛び出すと外には黒塗りのベンツが止まっていた。そのベンツにもたれ、煙草を吸っているサングラスの方は、此方を見た。

「――鳴海は」
「……眠ってました。すみません。私が余計な事ばかりするから」
 そう言うと、頭を二回軽く叩かれた。
「あんたは鳴海の為に頑張ったんだろ」