千景は、聖マリア女学院の制服に身を包んだみかどを、上から下まで眺め、初々しく純粋そうなあどけなさに舌舐めずりをする。

「そ、そうなんですか」
「うひゃ、あの、すいません、綺麗な人が熊の耳を付けてるのが初めてな状況でして」

 悲しげな瞳で問われれば、みかども何だか申し訳なくなり謝ってしまった。

「それは驚かせてしまいすいません。今、珈琲と何か持ってきますので」
「いいいえ、おかまいなく。弟も居ますしもう帰ります!」

綺麗なウエイターが、身体を半分に折り曲げるように謝ると、付けていた熊の耳が、ぶるるんと揺れた。そのあまりのカオスな様子に、みかどは逃げ出したくて必死だった。

「駄目だって。ここに、姉ちゃんの『兄』が居るはずなんだ。すいませんが、この顔に似ている従業員とか常連とかいませんか」
 皇汰がみかどを押しのけて、巨乳と熊の耳男に詰め寄る。

「姉じゃダメかしら」
「大歓迎です」
「皇汰っ」
 皇汰の視線は、清々しいほどにその大きく実った胸に釘つけだった。

「ほら、鳴海さん。店長でしょ 急いで二人に珈琲を入れてよ。何だか訳ありっぽいわよ」
 千景と呼ばれた色気全開のウエイトレスは、店長を顎で使うと二人をCafeの奥へ案内した。
「そんなっ。義母には冷たくされ、実の父は庇うことなく義母に浮気がバレて海外へ逃げ、こんな可愛い女の子が途方に暮れているなんて」