さすが、日曜日の遊園地。到着し、中に入ると、人、人、人。親子連れや、カップルで賑わっている。騒がしく人が多い所では、大事な話に持っていきにくい。が、皇汰の指示だ。
「で どれに乗りたいワケ」
入り口で貰ったパンフレットを渡される。作戦なのに、照てしまうみかどは頑張ってカップルスペースに誘わなければいけないのにもたついてしまう。
「あんた、ジェットコースターとか乗った事あんの」
「……な、いですけど」
「じゃあ、決まり。キッズスペースのジェットコースターが怖かったら、他の乗り物も乗れねーんだし、先ずは此処からな」
作戦からはちょっと逸れたけれど、意外とみかどの事に気を使ってくれているようだ。
ゆったりと会話も無く歩いていたら、親子連れとすれ違いながら、岳理が言った。
「楠木教授と、遊園地とか行った事あんの」
「岳リンさんは……」
「何だよ、『岳リンさん』って。岳理か岳リンでいいよ」
「岳理さんは、うちの父親がこんな所に来ると思ってるんですか」
「思わない」
「父の口癖の『統計的』に説得して説明できたら、多分来れますよ。『統計的に家族が、遊園地に行くのは当たり前』とか、ね。でも、そんな理由で行ってもつまらないから」
「……あっそ」
ばつが悪そうに、気まずそうにサングラスをかけ直す。馬鹿にするつもりで聞いたのなら、そんな表情しないで欲しい。
「あれ、乗りましょう」
気まずくなったみかどが指差したのは、子供用ジェットコースター。数人の親子が並んでいる中を、カップルで並ぶには些か勇気がいる。
「あれ、百三十センチ以上って書いてるぞ」
「なっ私、百五十五センチあります!」
慌てて、年齢制限の書かれた看板の子供の横に立ち、背比べした。すると岳理は声を押し殺して笑った。
「……冗談だ」
そう言って、頭を2回叩くと、チケットを買ってさっさと行ってしまった。今、笑った。信じられないものを見てみかどは数秒固まったのは言うまでもない。
「これ」
子供用ジェットコースターは、岳理のダウンで幕を閉じた。みかどが濡らしたハンカチを渡すと、ベンチにもたれかかっている岳理は無言で受け取る。
「絶叫系苦手でした?」



