唇を、綺麗に磨かれた爪の指がなぞり、その指を自分の唇に重ねる。間接キスに呆然としている皇汰に悩ましげな視線を投げかけたまま、女はパニックを起こしている二人の元へ歩いて行く。大きな瞳に、長い睫毛、分厚い唇。肩に当たるか当たらないかのボブの髪に、蜂蜜の様な甘い匂いを身に付け、溢れんばかりの胸をたゆたわせながら、その女は男の手に持っている紐パンを奪った。

「もーう。鳴海(なるみ)さんたら、コレ私が買った奴じゃない」
「ち、ちか、千景さん! なんてモノを窓辺に置いているんですか! 如何わしいお店と間違われたら大変ですよ!」

「如何わしいじゃん。双子は女の子を侍らせ、英国紳士は老人を侍らせ、大学教授は学生を連れ込み」

「そ、そんな言い方をしないでくださいっ」

 千景と呼ばれるセクシーな女性に、男はたじたじで泣きだしそうな真っ赤な顔で叫んでいる。それを見ながら、みかどはちょっとだけその男の人を可愛いと思ってしまっていた。

「ねえ、この可愛い女子高生、私の紐パンじゃなくて鳴海さんの熊の耳に引いてるんじゃないの」