カフェ『アルジャーノン』の、お兄さん☆


リヒトさんは、長い茶髪の髪を取り、切れ長の目をウインクさせた。
「鳴海とは、道ならぬ恋だけど、真剣なの」
 理人が憂いを込めた瞳に涙を溜めて訴えていた。

「そんな訳ありません! もうっ炒飯できるまで静かに待ってて下さい!」

みかどは店長に腕を掴まれ、引きずられる様に、キッチンへ連れて行かれてしまう。理人は、余裕綽々で優雅に手を振ってくれた。

「すみませんね。透さんは冗談が好きなので、気にしないで下さいね」
「えっはい。で、も、あの、」

 みかどは掴まれている腕を、見た。
「……腕が痛いです」
「す、すいません!」

 慌てて単調は腕を放すと、頭を掻いて申し訳なさそうに謝った。

 何故か短い沈黙ができてしまい、みかどはお冷やのボトルを掴む。
「お、お水のお代わり見てきますね」
「あ、お願いします」

 店長も腕捲りしてキッチンへ入って行く。
 昨日、店長の話を聞いたからか、千景が『好きなの』とか意地悪を言うからか、――店長の顔を見るのに、少し身構えてしまう。みかどが初めて、恋愛対象として店長を見てしまいそうでうろたえている。理人店長の彼女だと言った時、凄く胸が苦しくなった。上手く言えないが、きゅーっとして、ポワンと足元が浮かぶような。チクチクして、フワフワするような。そうやって、色々考えながら歩いていたら、クスクスと笑っている声に気づいた。理人が、席に両肘をつき、可愛らしく顎を置いて此方を見ていました。

「百面相、もう終わり」
 色っぽく笑うから、みかどは思わず赤面してしまった。

「本っ当に、みかどちゃんは擦れてなくて可愛いね。俺ね、女の子って、息してるだけで、ううん、生まれてきただけでも可愛いと思うよ」
 そう言って、水の入ったボトルを奪われ理人は自分で優雅に水を注いだ。
「慎ましやかなのも可愛いけど、今度またトールにメイクさせてあげてね」
「え」

 ナイスタイミングで店長がキッチンから珈琲を持ってきたが理人は気づいていなかった。「だって、『デート』するんでしょ 千景ちゃんから聞いたよ」


「千景ちゃんから、誘惑できるぐらい綺麗にしてやってって言われたけど、このままでも俺はいちころなのにな」

 体温が下がると同時に、みかどは店長を見上げたけれど、店長は急いで逸らすとキッチンへ入っていった。迷惑メールだからと着信拒否して貰い、尚且つ心配して何か力になりたいと言ってくれた、のに。たとえ、その感情に特別なモノなんでなくても。

たとえ、メールを見た罪悪感から、力になりたいと言ってくれていたとしても。たとえ、土日なら助けてくれないとしても。みかどは今、優しい店長の気持ちを蔑ろにした。内緒で、あんなメールの人とデートするって思われた。ズルくて、なんて酷い嘘つきなんだろうと誤解されたはずだ。

「どうしたの 岳リンとデートなんでしょ」