「選ばれた人しか、葉瀬川教授のサークルには入れないんだよー。俺の大学でも有名だよ」
 ほら、とトールが指差した先には、葉瀬川を取り囲む数人の大学生がいた。さっそく改装準備を終えると入り口から入ってきたらしい。皆、落ち着きある大人っぽい男女で、ふふふ、ははは、と上品に笑いあっている。

「漫画を通し、『愛』とは何か、『生』とは『死』とはを考えるんだ」
「さすが、教授。奥が深いわ……」
「教授の語る漫画の知識は、脳に響きますね」
「今日は、とある古い漫画の初版と第四刷を見つけたので読み比べて見ようか」
「わー。素敵です」
「楽しみですね」
 
控え目に喜びながら、葉瀬川教授とサークルの子たちは奥へ入ってった。
「はいはい、どいたどいたー。私の友達を勧誘するの、止めなさいよー」
 探していた人の声が、人混みをかき分けて聞こえてくる。

「千景ち、………ゃん」
 そこには、谷間を強調した、ナース服姿の千景ちゃんがいた。
「千景ちゃん、その格好どうしたの」
「あぁ、テニス同好会の勧誘中なの。あと5人居なきゃ、テニスコート借りれないし、高くなるしぃ」

真っ赤な唇に淡いピンクのナース服。ここら辺の男の人の視線を一身に浴びそうな刺激的な衣装だ。だが、葉瀬川は今、良い教授モードで、トールは大好きな女性をそんな目で見ない。なので、千景が今反応を楽しめるのはみかどだけなのである。

「触ってみる」
 ちょんっと、胸元の服を引っ張り、甘く誘いかけた。女なのに、みかどは、何でドキドキしてるのか自分の胸を押さえる。
「千景ちゃん、き、今日時間ありますか」
 スリットがギリギリで視線がつい言ってしまいながら尋ねる。千景に話しかけると、色っぽく微笑んでくれた。

「ええ。どうせなら今日は大学の食堂で食べて帰りましょう」
「えええ」
「透さん、みかどのセットお願いできる」
 千景の言葉に、トールの顔がキラキラと輝いた。