ウエイター姿で現れた男の人の、足の長さが長すぎて比率がおかしいとか、笑って近づいてくると笑顔が甘いとか、みかどの頭に色々と過るが、それどころでは無い。頭の熊の耳が気になって仕方が無い。この綺麗な男の人は、現在耳を四つも所持している。
「み、みみみ」
「あ、飾ってある熊の耳の数字ですか あれは僕の誕生日の――!」
優雅に笑っていたウエイターは、窓辺に置かれた熊の、スタイに漸く気がついた。
「うわうわわわわ、これは、これはい、違うんでうです、こ、このようなものは」
「わー、耳が四つ!」
熊の首から紐パンツを取ると、手に持った瞬間、その綺麗な男はあたふたと耳まで真っ赤、いや、首まで真っ赤にして視線を泳がす。
「こ、これは、その、あああ。もう! 千景(ちかげ)さん!」
真っ赤なヤカンの様になった男が、カウンターの奥へ悲痛な叫びを投げつけた。その男とみかどが、紐パンと熊の耳で騒いでプチパニックを起こしていたら、カウンターの向こうから漸く足音が近づいてきた。そして、外で待っていた皇汰も騒ぎを聞きつけて思い切りドアノブを開けて部屋に飛び込んでくる。
「姉さん!」
「あ、らん」
ぷるんとした張りのある弾力のあるもので、皇汰は弾き飛ばされた。
「ふふ。ごめんなさいね 大丈夫かな」
鼻を押さえる皇汰に、艶のある声で女が顔を覗きこむ。
「食べちゃいたいぐらい可愛い男の子ね」



