スーパーに寄ったら、お兄さんがいた。
「お兄さん」
 腕組みをして悩む店長に声をかけると、みかどに気づき手を振ってくれた。帽子を被っているがその下は一体何の動物が居るのか謎だ。
 見ていた棚を覗くと納豆コーナーだ。
「納豆、好きなんですか」
「好きなような、普通なような。ただ、給料前の大事な戦友なのですよ」
「ほぉ」
 最近分かったのだが、店長は、食べ物の事になると饒舌になる。
 カレーは一週間持たせるらしく、卵、チーズ、蓮根揚げ、カツ、納豆、シーフードど毎日味を変えるのだと説明していた時は、みかおっでさえ可愛らしいと顔を緩めた。
「私もお金無いので、卵料理月間にしようかな……」
「おっ卵ですか。卵でした、ら」
「わっ! すみません」
 大きな振動に慌てて携帯を取り出すと、読まずに削除する。
「最近、め、迷惑メールが多くて」
 正確には『脅迫メール』だ。昨日から、岳リンがみかどに脅迫デートのお誘いばかりしてくるのだ。

「ああ、セキュリティ設定してますか
指定受信なら登録したメール以外拒否できますよ」
「ありがとうございます」

ヴーヴーヴー
「じゃあ、お給料頂いたら一緒に作りましょう。クリームパスタとか簡単ですよ。肉じゃがもカレーと同じ材料ですし」
「本当ですか! 嬉しい!」
ヴーヴーヴー
「……出ないんですか」
「は、はい。でも、怖くて」