カフェ『アルジャーノン』の、お兄さん☆



「よく紙鑢を注文するから身元も分かります。良い人ですよ」
 お店の人たちから庇われ、店長らしき人が警察に通報しようとしていた手を止める。
「金輪際、僕と姉に近づくのを止めてくれたら、僕も遣りすぎたし良いです」
 そう言って岳リンを睨みつけると、ふらつく岳さんは胸元から携帯と紙袋を取り出した。そして、皇汰に押し付け、店員さん達に頭を下げた。
「後日、きちんと謝罪に来ます。すみませんでした」
 そしてみかどをチラリと見たが、すぐに逸らして去って行った。みかど達は、岳リンが突っ込んで崩壊させた棚の品を並び直すのを手伝って、帰路に着いた。
「何、話してたの あの人と」
「――姉ちゃんには関係無いよ」
 そう言って、アルジャーノンに着くまで無言だった。
「その紙袋の中身、何」
 尋ねると、乱暴に皇汰は破いた。そして、不機嫌そうに渡してくれたのは植物図鑑。本屋で、みかどが岳リンに投げつけた物だった。みかどが欲しかった本だって気づいたのだろうか、ただの偶然なのだろうか。
「あいつ、何で姉ちゃんを追ってたの」

「『お世話になった教授の娘』って言ってた」
「……そっか。――うん。じゃあ、目障りだね。ちょっと千景さんのとこ、言って説明してくる」
 二人にしてみれば、浮気が見つかり渡米し行方不明中の父親に、これ以上なぜ苦しめられなけらばいけないのかと不満だ。
『単刀直入に言う』
あの目は怖かったけど、冗談ではなく真剣だった。どうして、あの人はみかどを脅迫したのだろうか。
ピリリリリッ
「うわっ」
ナイスタイミングで携帯が鳴った。
「……ひっ」

『今日は世話になったな。後日、デートでもしよう。これ、強制。孔礼寺岳理←登録するように』

 皇汰に見つかる前に慌てて、削除したが胸の動悸は治まらなかった。