カフェ『アルジャーノン』の、お兄さん☆



受け取ろうとするが、上に空かされる。見上げると同時に腕をしっかり掴まれた。
「喋るな。やーっと捕まえた」
 口元を押さえられて、喋れないみかどは恐怖で固まった。いつの間に、目の前に現れたのだろうか。先ほど出会った時よりも十歳はやつれ疲れ切った岳リンは、みかどを睨みつける。
「お前に話がある。単刀直入に言うと、鳴海の隣から出ていけっ」
 恐怖でじわりと目頭が熱くなりボケやた時だった。
「いいか、お前の――」
「姉ちゃん!乗れっ」
「え! きゃぁぁ」
 いきなり現れた皇汰に、みかどは買い物カートに乗せられた。キキキキィィと小刻みよくタイヤがしなり、方向転換する。慌ててスカートを抑えると、そのカートで、岳リンに体当たりし倒し、尚且つ轢いて出口に向かった。

「そのまま、駐車場から家に戻って」
「皇っ」
 皇汰はみかどが乗ったカートを、勢いよく入り口から駐車場に飛ばした。みかどが体制を取り直し振り返った時には、新しいカートを持って岳リンとにらみ合っているにが見えた。

(あ、足が着かないから止めれないよー)
 みかどの声にならない叫びは二人に届かない。
「あんた、姉ちゃんのストーカーなわけ」
「話があるだけだ」
「探偵って割には、興信所の連中より馬鹿っほいし、金持ちの道楽って感じ パパにまだ養ってもらってるんでちゅかぁ」
 二人の火花が飛び散り、攻撃が開始された時だった。
「いたっ」
 フェンスにぶつかり、腰を強打しながらも、皇汰の元へ向かうが、――皇汰は既にお店の人に囲まれて泣いていた。
「お、お姉ちゃんが、この人に、ひっく、ストーカーされてて、け、携帯を返して、もらいたくて、うぅ」
 棚に、突っ伏して倒れ動かない岳リンをお店の人が起き上がらせていた。何があったのか怖くて聞けない状況だ。ただ、分かるのは皇汰が可愛らしい外見を武器に嘘泣きしていることだけだ。店員が、岳リンの顔を覗き、恐る恐る尋ねた。
「孔礼寺さん」
 岳リンは、まだふらつきながらも、頷いて立ち上がる。
「店長、僕の家、この人の寺の檀家なんですよ」