脱力していたら、突然携帯を後ろから取り上げられた。
 息を切らし、汗だくなこの人物は、さきほど駅で置いて来てしまった『くれんじがくり』。みかどの背中に冷たい汗が走る。
「……岳リン、さん」
「岳リン、遅刻だから今日は岳リンの奢りねー」

 動じない葉瀬川はゆるりとそう言うが、岳さんは葉瀬川を見ない。
「お、前、さっきは…はぁっはぁっよく、も」

流れる汗を拭いながら、前屈みで息を吐きただただみかどを睨む。
「お詫、びに、ちょっ、つき、あえ……」
 そう睨まれ、みかどは手にしていた植物図鑑を持って固まってしまう。
「岳リン、はぁはぁ気持ち悪いねー。君、逃げなさいよ」

「ちょっおじさん!」

 まだ息を切らしていた人は、葉瀬川に怒鳴るとみかどを再度睨む。そして、一歩、一歩、近いてくる。伸ばされた大きな手が、彼女に恐怖を与える。

「きゃああああっ」
 植物図鑑を投げつけると、本日2回目の猛ダッシュでみかどは逃げ出した。

「おお、逃げろー逃げろー。お店の店員さーん、ここにストーカーが居ますよー」


遅刻された葉瀬川は、実は怒っていたらしく謝りもしない岳リンに空気の読めない意地悪をしてくれた。本日二回目の警察のお世話は向こうも避けたいはずだ。おかげで逃げ出せが植物図鑑をもう少し見て居たかったとみかどは思っていた。
 何とかホームセンターに着くとすぐに女子トイレへ隠れる。トイレには、センター内の案内図も貼られており、もしもの為に逃げ場所も確保する。


 敵意を向けられている様で恐怖しか感じていないみかどには理由が分からない。
先ほどの岳リンと言う探偵に携帯を取られてしまい皇汰に助けを求められないと気付いた。身内にしか教えてなかっものだし、今ガラケだし、買い替えれるが映画はどうしようか。そう思いっきり顔を揚げて決意した時だった。
「探し物、これ」

目の前に出された携帯は、紛れもなくみかどのガラパゴス携帯。
「それです」