カフェ『アルジャーノン』。

 みかどは外から中を覗くと、ショーウインドウにメニューでは無く、この前の熊のぬいぐるみでは無く香水が並べられているのを見る。色とりどりの宝石の様な香水と、綺麗な硝子の靴。そしてコスメセット。カフェが一気に大人っぽくお洒落な雰囲気に変わっている。
 毎日インテリアがその日に入った従業員によって変わるらしい。みかどは、ウエイトレスの茶色いタイトなスカートと白いブラウス姿でそのインテリアを見渡していた。
 きっかけは、店長と一緒に千景の夕飯を御馳走になっている時だった。

『居候の身で食費も払えないのに御馳走を頂く訳にはっ』
 並べられたカレーを見て、涎を我慢しながらみかどが言うと、千景は笑った。

「じゃあ、勉強の邪魔にならない程度にお店を手伝って。聖マリア女学院はバイト禁止よね。だからバイトではなく手伝い。報酬はないけど、食費も家賃もいらないよ」

そんなにうまい話が世の中に転がっているはずないと思いつつも、その話しはまさに藁をも掴む素敵な提案だった。だからみかどは今、その提案に乗り、ウエイトレスの姿をし手伝いをしている。
 が、今日の従業員はまだスタッフルームから出て来ない。