(何で、この人は、お父さんの事を知っているの……)
「探偵を舐めるな。調べれば分かる」
「鳴海んは、楠木教授に子どもがいるの、知らないよ」
おじさんはそう、ぽつりと言うと、新聞の人の肩を叩いた。
「記憶喪失を、侮っては駄目だよ。いいから、もう帰りなさい」
新聞の人は、舌打ちすると、そのまま振り返る事も無く、足早に去って行った。お鍋を被ったみかどと皇汰はただただそれを見つめているだけだったが、千景が口を開く。
「葉瀬川さん、どういう事ですか」
おじさんはしばらく考えていたが、やがて諦めたように無表情で言った。
「彼も鳴海くんもT大学の生徒だった。楠木先輩は臨時で半年だけ、T大のとあるゼミの手伝いをしていた。……ただ、それだけ」
千景は難しい顔をしていたが、ため息をついて私たちの方を振り返った。
「みかどちゃん達、ごめんね。直接は関係無いみたいだから、大丈夫よ」
「クソジジイは有名だから仕方ないよ。それより、『葉瀬川さん』って言うの」
顎に手を起き、ぼーっとしている人に、皇汰は尋ねた。



