カフェ『アルジャーノン』の、お兄さん☆


「岳リンの事情なんて、どうでも良いし、作業が一週間遅れるから、面倒なんだよね」
 そう言って、ポケットから茶封筒を取り出し、新聞の人に手渡した。一通り、やり取りが終わってから二人を見る。

「あ、の、201号室に引っ越して来ました、楠木みかどと、遊びに来ている弟です」
「――ああ、はいはい。なる程。君たちが楠木先輩のお子さん達だねぇ……」
「……えぇ」
「まぁ楠木先輩なんて専攻も違うし、どうでもいいや。岳リンは、まだ居るの」
 さも、用済みだと言わんばかりの口調で追い立てる。俯く新聞の人を、退屈そうにおじさんは見た。
「君が直接、鳴海んに渡したかったのかい」
「……」
 新聞の人は首を激しく左右に振ったが、目は否定していなかった。泣き出しそうに、辛そうな瞳。二人は再び蚊帳の外になり立ち尽くしていると、後ろから千景の声がした。
「駄目って言ってるじゃない、あんた達!」
 もこもこの黄色いワンピースの千景さんが、様々なブランドバックの紙袋を肩にぶら下げて仁王立ちで睨んでいる。
「葉瀬川さん、この人に頼み事しないでよ。岳理さんも、おばあちゃんに来ないでって言われてるんでしょ」
 更に蚊帳の外の二人にはもはや会話の意味すら分からなかった。
「鳴海さん、貴方を思い出したら、フラッシュバック起こしちゃうかもなんでしょ」
「だったら、楠木教授の子どもが隣って良いのか!」
「――どういう事」

 新聞の人と、千景が睨み合うが、ある言葉に二人も、言葉を失った。