「違うっ俺は……」
帽子を外せば、硬派な男の人が姿を表した。無精髭、無造作に伸ばされた黒髪、キリッとした眉毛に、二重のぱっちり瞳。店長が繊細で綺麗な人だとしたら、この人は日本男児みたいな凛々しい人。
「――何が違うだぁ じゃあそのホームセンターの袋、何だよ!」
「これは、頼まれた紙鑢だよ」
「紙、鑢……」
がうがう吠える、豆柴のような皇汰に、帽子の人が戸惑っていると、二人の頭上から、声がした。
「岳リン……」
そう言って、103号室のドアが開いたのだ。
「何で岳リンは、いつも指定日に来ないの 土日に来られても困るって言ってるのに」
目尻のしわ、わし鼻、彫りの深い顔立ちの若々しい男性が、103号室から出てきた。アンニュイな雰囲気で、表情も変えずに淡々と喋っている。Yシャツ姿の男はネクタイを緩めながら呑気に階段を下り、新聞の人に近づいていく。
「此方にも事情がある」



