「馬鹿かっ警察に詳しく事情聴取されたり下着を証拠品として押収されたら、傷つくのは千景さんだぞ」
 さすがにそれは話が飛躍しているように感じられるが、皇汰の勢いは止まらない。
『ニャアア』
「!」
 威嚇するような定宗の鳴き声に、二人は外を見た。
「きっと、侵入したんだ」

 皇汰は急いで、台所へ走った。そして、カレー鍋を頭に、背中に教科書を入れ、お腹には新品のまな板を装備した。みかども見よう見まねで同じように装備し、フライパンを握りしめる。皇汰はバスケットボールと、傘を握り、暗くなり出した外へ音を立てずに飛び出した。五月蝿い階段も、ゆっくりのっそり降りる。
 だが、さっきの場所に、新聞の人は居なかった。しかし怪しい人物はカフェの入り口でキョロキョロと辺りを見回している。手には、スーパーの袋らしき物。そして、階段を降りている途中の二人を見て、明らかに一瞬固まった。が、頭に鍋を被っている二人が降りてくればきっと誰でも驚くだろう。


「もう我慢できねぇ!おい、てめぇ、出てこいよっ」
 まな板アーマーの皇汰が、階段を勢いよく降りだした。
「こ、皇汰!」
「ここには、俺の姉ちゃんが居るんだぞ!姉ちゃんが不安がるだろ!」

 胸をじんと熱くしていると、さらに皇汰は逃げない新聞の男にボールを投げつけた。黄土色の汚らしい帽子が空を跳び、慌てて降りたみかどの足元に舞い降りる。
「うっわ。新聞紙、逆さまとか益々怪しいっ」