魔女はキッチンへ向かうと、その長い爪で換気扇を回し、煙草を吸いだした。夫や皇汰の前では絶対に吸わないのに、だ。
「わ、わかりました」
上擦んだ声で、彼女は俯きながら部屋を出ていこうとする。
「あの人も、貴方の三者面談には行きたくないって。可哀想に。せめて見た目ぐらい可愛かったなら、王子様と結婚ぐらいできるのに、ね」
貴方には無理よ、全て。そう嘲笑いながら否定していたら、玄関が思いっきり開いた。
「姉ちゃん、行くぞ!」
その一言が、彼女を助ける蜘蛛の糸。何もかも諦めても、無理して笑い、傷付きながら懸命に生きる少女を、皇汰はこう言って慰めたのだから。
『姉ちゃんは、現代のシンデレラだよ』



