二人にとって、花が咲かない品種のサボテンは邪魔な存在でしかない。
『出来損ないなんて、この家に居てほしくない』
みかど自身に告げられた言葉と見捨てられたサボテンの状況が重なりみかどは胸を痛める。
「みかどちゃん、どうされました」
「ごめんなさい。私、この一帯を歩けなくなってもいい。このサボテンを持って帰ります。このサボテンは花が咲かないんじゃないんです。金鯱って種類で三十年も育てれば花が咲く種類なんです! 愛情もなく世話もしないですむからって捨てられたり放棄されるぐらいなら私がこの子を連れて帰りますっ」
悔しくてみかどの目に涙が浮かぶ。悔しくて両手を強く握りしめると女性を睨んだ。クッキーを渡すはずが最早そんな気持ちは一ミリも沸いて来ない。花壇のチューリップの中に混ざる半球の小さなサボテンは、乱雑にそこに置かれている。
学校で幼少部から園芸部に入っていたみかどにはサボテンの種類も理解できていたしサボテンの鉢代えが難しいのも分かっている。愛情も貰えず世話も放棄するがそれでも花を咲かせろ、たまにティースプーン一杯の愛情にもならない水はやる。そんな理不尽な扱いは、自分だけで十分だろう。



