間違えてもあの小さな男の子がこの辺一帯のボスな訳ないだろうと、思いつつも動揺を隠せない。もっとやくざの様な、目を合わせるだけで売り飛ばされてしまいそうな怖い人物を想像していたのだろう。
「そうですよ。でも年齢は聞いたら駄目ですよ。女性ですから怒ります」

 滑り台を横切り、花壇の親子へ近づく。辺り一面は夕焼けでオレンジ色に染まり、滑り台の上はオレンジ色に輝いている。

 親子の近づこうと横切ると一瞬、滑り台の上の光が遮られた。見上げると、滑り台の上に大きな漬物石が置いてあった。10キロはありそうな大きな漬物石がオレンジ色の光を遮断してしまっている。それを凝視していると、花壇の前の男の子が立ち上がった。

「花が咲かないサボテンなんていーらない」
 スコップを持った男の子が花壇に土を飛ばすと振り返りみかどの横を通り抜けていく。

「サボテンってティースプーン1杯の水を気紛れにあげるだけで世話も楽で花も咲くって聞いていたのにね。ママもガッカリだわ」
 「其処で何をしているのですか」
 女性は少し戸惑い口ごもると下を見る。

「……公園はゴミを捨てるのは禁止だけど、サボテンの鉢代えは別に禁止されてないわ。育てきれないから此処に置いておくだけです。その方がこのサボテンにもきっと良いはずでしょう」

『花が咲かないサボテンなんて、いーらないっ』