「あはは、可愛いからついつい買っちゃうのよね。そうだ、使っていない下着がクローゼットいっぱい締まってるから自由に使ってね」
「え、遠慮します」
クローゼットだけは開かないようにしようと、堅く胸に刻む。
「おーい、千景さん、みかどちゃん」
下から店長の声がする。みかどは下の名前を呼ばれて少しドキドキしてしまい慌てて胸を押さえた。
「どうしたのー」
「定宗さんが帰って来ないので、探しに行きたいのですが御留守番お願いできますかー」
定宗、と聞いてみかどは背筋が急にピンと伸びる。此処に厄介になるのだから、絶対に挨拶をしておかなければいけない、未知の住人だ。
「あの、店長さん、私も連れて行って下さいませんでしょうか!」
「みかどちゃんを」
「定宗さんに挨拶をしておかないと落ち着かなくて」
この近隣を歩けなくなってしまっては困る。



