岳理がまた舌打ちする。携帯をポケットに仕舞うと、バイクは方向展開し走り出す。反対側の車線は全く混んではいなかった。
岳理の背中にしがみついて頬に風が打ち付けられている中、どんどん潮の匂いがして来る。相変わらずの猛スピードとジグザグ運転に、心臓はドキドキしっ放しだ。だが予感する。店長はこれを見越して乗りもしないのにバイクをカフェに置いておいたのだろうと。港には、豪華客船を一目見ようと野次馬やカメラマン、TVのカメラも回っていいる。
「突如現れた、この豪華客船は、なんと! 日本に来るのは二十七年ぶりです。『TATSUMIARISUGAWA』プロデュースのメニューが有名で……」
アナウンサーが台本を読む後ろを、バイクで颯爽と走り抜けて、人々が振り返ってバイクを避けて行く。
「お兄さん!」
「鳴海!」
まだ船への入り口は閉められてはおらず、みかどを下ろし岳理もバイクから飛び降りた。
「お前、先に行け!」
バイクを止めている岳理さんに言われ、みかどは入り口に向かって走り出す。
「お兄さん!お兄さん!」
船のデッキを見回したり、何百もある部屋の窓を確認するが、店長の姿が見当たらない。すると、低重音の鳴き声がした。定宗を抱っこした麗子と、5色の紙テープを弄る店長の姿が見える。
「お兄さん! 何してるんですか!」
「何って歓迎テープをを垂らしています」
船の上から麗子と定宗の指示で、右に行ったり左へ行ったり、マイペースだ。
「わ、私たちがどれだけお兄さんを心配した事か!」
ふらつきながら、膝をついて倒れて項垂れている。
「み、皆さんに嘘を言いましたね! 葉瀬川さん達は、『香港経由南アフリカ・ルクセンブルク行き便』前でずっと待ってますよっ」
「でも、絶対に見つけてくれるって、信頼してましたから」
だからってそんなに余裕で紙テープの位置を確認するだろうか。
「お兄さん……」
「僕ね、親の愛情は不変ではないって分かってます。血のつながりなんて関係ないって分かってるのです。でもみかどちゃんが本当の妹な可能性があるなら、それをはっきりさせておきたいなって思ってます」
「お兄さん……」
「今から降りてくるあの人の僕は子供なのか。あの統計学の神、楠木教授の子供なのか」
「鳴海、てめー!」
話途中で岳理が走って来たので店長は少し焦っせたがみかどを盾に舌を出す。同時に船の出口に夥しい記者が群がりフラッシュが焚きだすとみかど達の目が出口へ集中する。
「ああああ!」
「もー疲れたぁ」
「鳴海んの馬鹿!」
「南アフリカ行ってしまえ!」
そう言いながらも到着した皆は店長の回りに群がる。
初めて会った日の店長は、トマトのように真っ赤だったのを思い出す。普段は着飾らないのに、いざお店に入ると、オーナーだなって思わせるほど、色気があって格好良い。店長の優しさに触れるとふんわり優しくなれる気がした。辛い過去やフラッシュバックを乗り越えて、みかどの手をとり、監禁から抜け出しした店長。
「お前、泣いてんの」
岳理にそう言われみかどが頷くと、岳理は涙を掬いあげた。
降りてきたサングラス姿の白髪の紳士はマスコミにも丁寧にお辞儀をすると、みかど達の前を通過しようとした。
「釘本鳴海です」
店長がそう大声で言い、警備員と皆が押しあいせめぎ合う中、TATUMIARISUGAWAは店長を見た。そのままサングラスを外した顔は――店長とは似ていない顔ではあったけれど、顔を破綻させた。
「君が血が繋がっていようといないと、愛しいよ」
その一言が、みかど達には分からなくてそのたった一言が、解決してくれる。
「真実を、一緒に見つけませんか。過去の、――過去の答え合わせをして下さい!」
「じゃあ、案内してくれないか。アルジャーノンへ」
紳士はそう静かに言うと、店長と肩を並べて歩き出した。
「さ、行きましょう」
「え! みかどちゃんも岳理くんも来るんですか」
店長はびっくりして、二人の顔を何度も交互に見る。
「もちろん。俺は運転手」
「私は、家へ帰るだけですので」
店長は深い深い溜め息の後、苦笑した。どうやら、観念したようだ。店長は両手に花の状態で、やれやれと諦めたように笑う。
「じゃあ、行きましょう」
そう言って、カフェ『アルジャーノン』へ向かったのでした。
continueforeverカフェ『アルジャーノンの、お兄さん☆』【完】
岳理の背中にしがみついて頬に風が打ち付けられている中、どんどん潮の匂いがして来る。相変わらずの猛スピードとジグザグ運転に、心臓はドキドキしっ放しだ。だが予感する。店長はこれを見越して乗りもしないのにバイクをカフェに置いておいたのだろうと。港には、豪華客船を一目見ようと野次馬やカメラマン、TVのカメラも回っていいる。
「突如現れた、この豪華客船は、なんと! 日本に来るのは二十七年ぶりです。『TATSUMIARISUGAWA』プロデュースのメニューが有名で……」
アナウンサーが台本を読む後ろを、バイクで颯爽と走り抜けて、人々が振り返ってバイクを避けて行く。
「お兄さん!」
「鳴海!」
まだ船への入り口は閉められてはおらず、みかどを下ろし岳理もバイクから飛び降りた。
「お前、先に行け!」
バイクを止めている岳理さんに言われ、みかどは入り口に向かって走り出す。
「お兄さん!お兄さん!」
船のデッキを見回したり、何百もある部屋の窓を確認するが、店長の姿が見当たらない。すると、低重音の鳴き声がした。定宗を抱っこした麗子と、5色の紙テープを弄る店長の姿が見える。
「お兄さん! 何してるんですか!」
「何って歓迎テープをを垂らしています」
船の上から麗子と定宗の指示で、右に行ったり左へ行ったり、マイペースだ。
「わ、私たちがどれだけお兄さんを心配した事か!」
ふらつきながら、膝をついて倒れて項垂れている。
「み、皆さんに嘘を言いましたね! 葉瀬川さん達は、『香港経由南アフリカ・ルクセンブルク行き便』前でずっと待ってますよっ」
「でも、絶対に見つけてくれるって、信頼してましたから」
だからってそんなに余裕で紙テープの位置を確認するだろうか。
「お兄さん……」
「僕ね、親の愛情は不変ではないって分かってます。血のつながりなんて関係ないって分かってるのです。でもみかどちゃんが本当の妹な可能性があるなら、それをはっきりさせておきたいなって思ってます」
「お兄さん……」
「今から降りてくるあの人の僕は子供なのか。あの統計学の神、楠木教授の子供なのか」
「鳴海、てめー!」
話途中で岳理が走って来たので店長は少し焦っせたがみかどを盾に舌を出す。同時に船の出口に夥しい記者が群がりフラッシュが焚きだすとみかど達の目が出口へ集中する。
「ああああ!」
「もー疲れたぁ」
「鳴海んの馬鹿!」
「南アフリカ行ってしまえ!」
そう言いながらも到着した皆は店長の回りに群がる。
初めて会った日の店長は、トマトのように真っ赤だったのを思い出す。普段は着飾らないのに、いざお店に入ると、オーナーだなって思わせるほど、色気があって格好良い。店長の優しさに触れるとふんわり優しくなれる気がした。辛い過去やフラッシュバックを乗り越えて、みかどの手をとり、監禁から抜け出しした店長。
「お前、泣いてんの」
岳理にそう言われみかどが頷くと、岳理は涙を掬いあげた。
降りてきたサングラス姿の白髪の紳士はマスコミにも丁寧にお辞儀をすると、みかど達の前を通過しようとした。
「釘本鳴海です」
店長がそう大声で言い、警備員と皆が押しあいせめぎ合う中、TATUMIARISUGAWAは店長を見た。そのままサングラスを外した顔は――店長とは似ていない顔ではあったけれど、顔を破綻させた。
「君が血が繋がっていようといないと、愛しいよ」
その一言が、みかど達には分からなくてそのたった一言が、解決してくれる。
「真実を、一緒に見つけませんか。過去の、――過去の答え合わせをして下さい!」
「じゃあ、案内してくれないか。アルジャーノンへ」
紳士はそう静かに言うと、店長と肩を並べて歩き出した。
「さ、行きましょう」
「え! みかどちゃんも岳理くんも来るんですか」
店長はびっくりして、二人の顔を何度も交互に見る。
「もちろん。俺は運転手」
「私は、家へ帰るだけですので」
店長は深い深い溜め息の後、苦笑した。どうやら、観念したようだ。店長は両手に花の状態で、やれやれと諦めたように笑う。
「じゃあ、行きましょう」
そう言って、カフェ『アルジャーノン』へ向かったのでした。
continueforeverカフェ『アルジャーノンの、お兄さん☆』【完】



