戻ってきた店長が優しく、優しく諭すように言う。甘く熱を含ませる。

 みかどは今、初めて店の内装やインテリアへ目を向ける余裕が生まれた。壁には、一面本棚が埋め込まれている。タイトルを見る限り、洋書ばかり。一番下の段には沢山の絵本が入っている。インテリアは、窓辺のデデイベア然り、本棚にもインテリアの様に所々にデデイベアが座っている。木の匂いがする、懐かしくなるような温かみのあるカフェに、みかどは思わず涙がこみ上げてくる。初めて来た場所なのに、どこか懐かしく、そして自分を両手を広げて受け止めてくれるような柔らかく優しい場所。
「ううっううう」
「みかどちゃん」

 自分の家でさえそう思えたことはなく、何処に居ても息がつまり、自由もなく拘束された日々だった。千景に抱き締められながら、張り詰めていた緊張の糸を切るように泣きだした。
「みかどちゃん、僕は貴方の兄……かもしれません。いっぱい甘えて下さいね」

頭を撫でながら、慈しむように言われ、うっとりと眼を細めた。咲かないサボテンは、ただのサボテン。カフェの上は、二階建のマンションになっていて、様々なイケメン達が住んでいた。
「で、みかどちゃんは201号室、鳴海さんの隣に住んでもらうけど、注意事項がいっぱいあるのよ」
「は、はい。住ませていただくのであれば、なんなりと」
「良かった。あのね、窓を開けても良いけど、カフェの裏側は全然掃除出来ていないから下は覗かない方が良いわ。草がボーボーよ」
「了解です」

びしっと了解ポーズをするみかどに萌えつつも、千景は話を進めていく。問題は、手入れをサボっている庭だけではないのだから。