「つまりそれは、孔礼寺に誰も入らせたくない秘密があるんじゃないですか」
「あっ」
みかどは、いつぞやのお酒の事件の時に会話した住職を思い出した。岳理に良く似たお茶目な人だった。
「岳理さんのお父さんには、まだウチの母のことを何も聞けていません」
聞けていないのではなく、聞く暇がないほど、毎日日々更新されて行く新しい環境になれるのだけが精いっぱいだった。それにきっと、岳理が兄だと言う事実を、どこかで否定したくて真実を遠ざけていたのだろう。
「そうですよね。だから、今から岳理くんをおびき寄せるので、貴方は一人で向かって下さい。岳理くんのお寺へ」
「お兄、さん」
首を傾げたみかど以外、周りの皆がにたりと笑うのが分かった。それとほぼ同時に、店長の携帯が鳴りだした。店長は大きく息を吸い込むと、その電話をとる。
「岳理君!」
慌てた、落ちつきのない演技の店長。
「そそうなんです! みかどちゃんが居なくなっちゃって。カフェに勉強道具とカバンはあるんですが、はい。携帯も繋がりません」
「あっ」
みかどの後ろで、みかどの携帯の電源を切りながら千景が不敵に笑っている。
「ど、どうしましょう。警察、警察に連絡を! あああ、でもそんな事になれば受験に差し支えるかもしれませんっ」
みかどは、皆がニヤニヤしているこの状況がまだよく理解できていなかった。だが、リヒトとトールが笑顔でみかどの肩を叩く。
「本当に知りたいなら、その足で行っておいで。俺らがあの馬鹿、足止めしとくから」
その言葉に漸く、震える体を奮い立たせる。店長の携帯が切れると、次に葉瀬川の携帯が鳴った。
「えー……みかど女史 見たよ、見た。思い詰めた目で、『海に行く』とか言ってたなー」
葉瀬川はパラパラと漫画を読みながら、適当に話を合わせる。
「どこの海って…… ん~……樹海」
樹海は海ではないのだが葉瀬川は適当に時間を繋げていく。
「あー……。電話切れちゃった」
そう言って、漫画を読みながら椅子に座りなおす。すると、次々に携帯が鳴りだした。すると、今度はリヒトが電話に出る。
「ああ。孔礼寺くん。どうしたの」
「あっ」
みかどは、いつぞやのお酒の事件の時に会話した住職を思い出した。岳理に良く似たお茶目な人だった。
「岳理さんのお父さんには、まだウチの母のことを何も聞けていません」
聞けていないのではなく、聞く暇がないほど、毎日日々更新されて行く新しい環境になれるのだけが精いっぱいだった。それにきっと、岳理が兄だと言う事実を、どこかで否定したくて真実を遠ざけていたのだろう。
「そうですよね。だから、今から岳理くんをおびき寄せるので、貴方は一人で向かって下さい。岳理くんのお寺へ」
「お兄、さん」
首を傾げたみかど以外、周りの皆がにたりと笑うのが分かった。それとほぼ同時に、店長の携帯が鳴りだした。店長は大きく息を吸い込むと、その電話をとる。
「岳理君!」
慌てた、落ちつきのない演技の店長。
「そそうなんです! みかどちゃんが居なくなっちゃって。カフェに勉強道具とカバンはあるんですが、はい。携帯も繋がりません」
「あっ」
みかどの後ろで、みかどの携帯の電源を切りながら千景が不敵に笑っている。
「ど、どうしましょう。警察、警察に連絡を! あああ、でもそんな事になれば受験に差し支えるかもしれませんっ」
みかどは、皆がニヤニヤしているこの状況がまだよく理解できていなかった。だが、リヒトとトールが笑顔でみかどの肩を叩く。
「本当に知りたいなら、その足で行っておいで。俺らがあの馬鹿、足止めしとくから」
その言葉に漸く、震える体を奮い立たせる。店長の携帯が切れると、次に葉瀬川の携帯が鳴った。
「えー……みかど女史 見たよ、見た。思い詰めた目で、『海に行く』とか言ってたなー」
葉瀬川はパラパラと漫画を読みながら、適当に話を合わせる。
「どこの海って…… ん~……樹海」
樹海は海ではないのだが葉瀬川は適当に時間を繋げていく。
「あー……。電話切れちゃった」
そう言って、漫画を読みながら椅子に座りなおす。すると、次々に携帯が鳴りだした。すると、今度はリヒトが電話に出る。
「ああ。孔礼寺くん。どうしたの」



