「でも、場合によっては、俺、岳リン許せないんだけど」
みかどを心配してくれているのは、トールとリヒトだった。
「えっとっ」
口止めをされているわけではないが、言っていいのか分からず視線をさ迷わせる。
「みかど女史と岳リンが、兄妹だったんだよねー」
「わ、葉瀬川さん!」
カフェの入り口でゆらりと現れて、言ってしまったのは葉瀬川だった。その言葉に、トールとリヒトが首を捻った。
「誰と誰が一緒だったの」
「岳リンの母親とみかど女史の母親」
「何じゃ、じゃあもう兄探しは終わりだったのか。見つかったのならば皆に知らせるべきではないか」
神父姿のドラガンもやってくると、みかどの顔を見る。
「――それ、ホント」
「俺達、岳リンから何も聞かされていないけど」
「写真が・・・・・・お兄さんと岳理さんが私の母と写真を撮っていて、その――岳理さんがそう言ったんです」
「それって、岳理さんのお父様は知ってるのかしら」
サークル帰りの千景まで、その話しに割り込んで来た。
「僕もそう思います。岳理君、まだ何か隠してる。僕の発作のせいで」
店長も寂しげな表情で溜息を吐く。
「つまり、まだ怪しいのよね」
千景が更に疑った目を向けた。
「ねー、岳リン今、どこ」
「も帰ったんじゃない」
「呼び出しちゃおうかー」
「男たるもの、はっきりせねばならん」
「そう言えば・・・・・・」
皆が盛り上がる中、店長が不思議そうな声を上げた。
「一度、岳理君が、長髪の黒髪が美しい女の人と駅に入って行くのを見たことがあります」
その言葉に、みかどのシャーペンを持つ手が震えた。
「何それー 詳しく詳しく!」
「や、凄く最近ですよ。後姿だがか違うかもしれませんが――」
「……」
岳理は、不器用ながらも、顔も良いし面倒見も良い、そして仕事も出来るし機転も利く。内面の良さが分かれば惹かれていくのも仕方ない。みかどはそう思いつつも、シャーペンを持つ手が震え、力が入らなかった。
店長の監禁事件が解決した今、本当はみかどの勉強を教えるのではなく、自分の幸せを見つける方が、きっと岳理は忙しいのかもしれない。
「私、もう部屋で勉強しますね」
無理に笑ったみかどの手を、店長が掴んだ。
「今、みかどちゃんが動揺するかなって思って、大袈裟に言ってしまいましたが、本当ですよ」
「へ」
「岳理くんに、彼女が居たら駄目ですか」
「だっ駄目じゃないです。駄目なんかじゃ! だって岳理さん、凄く良い人だし、不器用だけど、優しいし。意地悪だけど――暖かいし。岳理さんを、岳理さんを良い人だと気づいてくれた人がいるなら、妹の私としては嬉しいです」
それは、本当だった。みかどの『妹』としての立場では、本当の気持ちだ。偽れないのだから。
「でも、――泣いてますよね」
「お兄さん」
「泣いてますよ、心が」
店長はそう言うと、みかどの持っていた勉強道具全てを奪い、テーブルに置いた。そして、カバンを携帯カメラで撮ると、誰かに送信する。
「お兄さん」
「岳理君が、貴方に自分が兄だと言ってから、誰か孔礼寺に入った人、居ますか」
店長の質問に、従業員は全員首を振った。
みかどを心配してくれているのは、トールとリヒトだった。
「えっとっ」
口止めをされているわけではないが、言っていいのか分からず視線をさ迷わせる。
「みかど女史と岳リンが、兄妹だったんだよねー」
「わ、葉瀬川さん!」
カフェの入り口でゆらりと現れて、言ってしまったのは葉瀬川だった。その言葉に、トールとリヒトが首を捻った。
「誰と誰が一緒だったの」
「岳リンの母親とみかど女史の母親」
「何じゃ、じゃあもう兄探しは終わりだったのか。見つかったのならば皆に知らせるべきではないか」
神父姿のドラガンもやってくると、みかどの顔を見る。
「――それ、ホント」
「俺達、岳リンから何も聞かされていないけど」
「写真が・・・・・・お兄さんと岳理さんが私の母と写真を撮っていて、その――岳理さんがそう言ったんです」
「それって、岳理さんのお父様は知ってるのかしら」
サークル帰りの千景まで、その話しに割り込んで来た。
「僕もそう思います。岳理君、まだ何か隠してる。僕の発作のせいで」
店長も寂しげな表情で溜息を吐く。
「つまり、まだ怪しいのよね」
千景が更に疑った目を向けた。
「ねー、岳リン今、どこ」
「も帰ったんじゃない」
「呼び出しちゃおうかー」
「男たるもの、はっきりせねばならん」
「そう言えば・・・・・・」
皆が盛り上がる中、店長が不思議そうな声を上げた。
「一度、岳理君が、長髪の黒髪が美しい女の人と駅に入って行くのを見たことがあります」
その言葉に、みかどのシャーペンを持つ手が震えた。
「何それー 詳しく詳しく!」
「や、凄く最近ですよ。後姿だがか違うかもしれませんが――」
「……」
岳理は、不器用ながらも、顔も良いし面倒見も良い、そして仕事も出来るし機転も利く。内面の良さが分かれば惹かれていくのも仕方ない。みかどはそう思いつつも、シャーペンを持つ手が震え、力が入らなかった。
店長の監禁事件が解決した今、本当はみかどの勉強を教えるのではなく、自分の幸せを見つける方が、きっと岳理は忙しいのかもしれない。
「私、もう部屋で勉強しますね」
無理に笑ったみかどの手を、店長が掴んだ。
「今、みかどちゃんが動揺するかなって思って、大袈裟に言ってしまいましたが、本当ですよ」
「へ」
「岳理くんに、彼女が居たら駄目ですか」
「だっ駄目じゃないです。駄目なんかじゃ! だって岳理さん、凄く良い人だし、不器用だけど、優しいし。意地悪だけど――暖かいし。岳理さんを、岳理さんを良い人だと気づいてくれた人がいるなら、妹の私としては嬉しいです」
それは、本当だった。みかどの『妹』としての立場では、本当の気持ちだ。偽れないのだから。
「でも、――泣いてますよね」
「お兄さん」
「泣いてますよ、心が」
店長はそう言うと、みかどの持っていた勉強道具全てを奪い、テーブルに置いた。そして、カバンを携帯カメラで撮ると、誰かに送信する。
「お兄さん」
「岳理君が、貴方に自分が兄だと言ってから、誰か孔礼寺に入った人、居ますか」
店長の質問に、従業員は全員首を振った。



