持っていたおにぎり達を、お盆ごとテーブルに置いて、溜め息を吐く。岳理が洗ったお皿を受け取り拭きながら、皆を見る。甚平の片腕を脱ぎ、どこから出したのか扇子を持ち、舞うドラガン。
ドラガンの好きな『敦盛』は、かの有名な信長が本能寺で最期に舞ったとされている。喋らないドラガンは、艶めいていて本当に王子様のようだ。その横で真似してたどたどしく踊る店長も、綺麗な色気があった。
「今日は、――少し岳理さんが遠くに感じます」
「隣に居た事とかあるワケ」
「い、いつもより遠い気がするんです!」
「俺には、みかども鳴海も望んでいる距離よりは遠いよ」
そう言って嘆息すると、乾いているお皿を戸棚に片付け始めた。
「な、何か悩み事とかあるのなら、教えて欲しいです。・・・・・・き、兄妹なんですし」
拭いたお皿を乾かし並べながら、お互い目は前を向いたまま切り離された空間のような、映像やドラマを見ている気分で皆を見る。探していた兄のはずの岳理が、遠い。知った後からの方が遠いのだ。長く短い沈黙の後、岳理は頭に被っていたナプキンを取った。
「悩みはない」
「なっ! 悩みが無い人なんて居ませんよ!」
食器棚を閉めながらそう言い切った岳理に詰め寄ると、急に振り返りみかどを見下ろした。その目が、射抜かれるように鋭くて熱くて、やはり怖くて後ろに数歩みかどは下がる。じりじりと下がるみかどの目を、逸らさない岳理。
「みかどには、本当に感謝している」
そう言って、一歩近づいていく。みかどは距離が遠いと不服を言ったのに、岳理が一歩近づくと、一歩下がり、また近づくとまた下がり、とうとう壁にぶつかってしまった。言葉が、本音が欲しいけれど、その射抜くような目が怖いのは、何故だろう。
「今も怖いくせに、俺の話を聞こうとしていて、本当に面白いヤツだなって思ってる」
優しい声だったが岳理の顔をみかどは直視できなかった。けれど、優しく甘く、包み込んでくれている。
「だから、これは俺の問題。俺たけの気持ちの問題、だ。」
「す、少しでも力にはなれないですか」
そう聞くと、ゆっくり首を振る。
ドラガンの好きな『敦盛』は、かの有名な信長が本能寺で最期に舞ったとされている。喋らないドラガンは、艶めいていて本当に王子様のようだ。その横で真似してたどたどしく踊る店長も、綺麗な色気があった。
「今日は、――少し岳理さんが遠くに感じます」
「隣に居た事とかあるワケ」
「い、いつもより遠い気がするんです!」
「俺には、みかども鳴海も望んでいる距離よりは遠いよ」
そう言って嘆息すると、乾いているお皿を戸棚に片付け始めた。
「な、何か悩み事とかあるのなら、教えて欲しいです。・・・・・・き、兄妹なんですし」
拭いたお皿を乾かし並べながら、お互い目は前を向いたまま切り離された空間のような、映像やドラマを見ている気分で皆を見る。探していた兄のはずの岳理が、遠い。知った後からの方が遠いのだ。長く短い沈黙の後、岳理は頭に被っていたナプキンを取った。
「悩みはない」
「なっ! 悩みが無い人なんて居ませんよ!」
食器棚を閉めながらそう言い切った岳理に詰め寄ると、急に振り返りみかどを見下ろした。その目が、射抜かれるように鋭くて熱くて、やはり怖くて後ろに数歩みかどは下がる。じりじりと下がるみかどの目を、逸らさない岳理。
「みかどには、本当に感謝している」
そう言って、一歩近づいていく。みかどは距離が遠いと不服を言ったのに、岳理が一歩近づくと、一歩下がり、また近づくとまた下がり、とうとう壁にぶつかってしまった。言葉が、本音が欲しいけれど、その射抜くような目が怖いのは、何故だろう。
「今も怖いくせに、俺の話を聞こうとしていて、本当に面白いヤツだなって思ってる」
優しい声だったが岳理の顔をみかどは直視できなかった。けれど、優しく甘く、包み込んでくれている。
「だから、これは俺の問題。俺たけの気持ちの問題、だ。」
「す、少しでも力にはなれないですか」
そう聞くと、ゆっくり首を振る。



