「……お前ら」
店に入ろうと一歩踏み出した状態で、岳理は固まった。
「どっちが抱き締められてんだか」
そう言うと、落ちていたゾウサンジョーロに、外に設置している蛇口からお水を入れ出した。
「猫違いだったよ」
キュッと閉めると、バジル達にお水をあげ始める。本日何回目だとバジルたちも良い迷惑だろう。
「二十年前の話だ。ヴィクトリアーヌちゅわんは、とっくに幸せに人生を全うしてる。あのオバサンに捨てられた後、金持ちの家に引き取られ、ナイスバディの美人猫と結婚し、孫まで産まれてる」
ペラペラと、膨大なヴィクトリアーヌちゅわんの人生ストーリーを話しだしたので皆で笑った。
「捨てる糞もいれば拾う神あり、だ。捨てられたヴィクトリアーヌが、幸せにならねーワケねーだろ」
そう言って、力強いその腕で、二人を立ち上がらせる。
「あんまベタベタすんな。羨ましいだろーが」
ちょっぴり皮肉を吐いたが岳理に助けられた瞬間、温かい気持ちに包まれたのに、――現実は、とても意地悪だ。本物の兄ならば目の前に居るのだ。
ヴーヴーヴーヴー
「さ、さて、岳理さん、ランチでも食べて行かれませんか」
ヴーヴーヴーヴー
急に岳理の眼が冷ややかになる。
「あああ、マナーにしてなくてすみませっ……ああ!」
岳理は名探偵なスピードで、エプロンから携帯を盗むと、手を空高く持ち上げた。頭一個小さいみかどには、両手を伸ばしても届かない。
「お兄さん! 泥棒です! 助けて下さい!」
そう言うと、店長が携帯を奪い、画面を見る。
「『お父さん』……」
ピッと受話器を上げて、耳元に当てる。
「はい。こちらカフェ『アルジャーノン』です」
「あぁああ! お兄さんも何してるんですか!」
慌ててみかどは取り返すと、携帯に話しかけた。
「今、バイト中です!」
『皇汰をそそのかしたのはお前だろ!』
激怒しているが、みかどには何がなんだが話が分からない。
「何の事ですか」
『出来は悪くても惚けるのは一人前だな』
「…………」
首を傾げつつ返事に戸惑っていたら、また岳理に携帯を奪われ、スピーカーボタンを押された。
『皇汰の部屋から、皇汰の物が跡形も無く運び出されたと聞いた。真絢も接触禁止と弁護士が言ってきたぞ。私まで中学に行ったら門前払いだった。お前と話をするまで帰らないと言われたぞ』
「頭良いですね、皇汰くん」
「マセガキがっ」
父の言動に不信が募る。今日は忙しいと言いながら、皇汰の事なら中学まで行く。みかどの話は聞く様子もなかったのに、だ。そう思うとつい笑ってしまった。
『何を笑ってる!』
「で、いつならお時間頂けるんですか」
感情も込めず淡々と質問すると、少し間が合ってから答えた。
『土曜日の朝、三者面談を取りつける』
「お、親父とは話できた?」
「ええ 皇汰! いつの間に!」
「早くバター作ろうぜ、俺、お腹空いた」
岳理も平然と、綺麗になったカフェのテーブルに、冷蔵庫から取り出した生クリームを取り出す。
店に入ろうと一歩踏み出した状態で、岳理は固まった。
「どっちが抱き締められてんだか」
そう言うと、落ちていたゾウサンジョーロに、外に設置している蛇口からお水を入れ出した。
「猫違いだったよ」
キュッと閉めると、バジル達にお水をあげ始める。本日何回目だとバジルたちも良い迷惑だろう。
「二十年前の話だ。ヴィクトリアーヌちゅわんは、とっくに幸せに人生を全うしてる。あのオバサンに捨てられた後、金持ちの家に引き取られ、ナイスバディの美人猫と結婚し、孫まで産まれてる」
ペラペラと、膨大なヴィクトリアーヌちゅわんの人生ストーリーを話しだしたので皆で笑った。
「捨てる糞もいれば拾う神あり、だ。捨てられたヴィクトリアーヌが、幸せにならねーワケねーだろ」
そう言って、力強いその腕で、二人を立ち上がらせる。
「あんまベタベタすんな。羨ましいだろーが」
ちょっぴり皮肉を吐いたが岳理に助けられた瞬間、温かい気持ちに包まれたのに、――現実は、とても意地悪だ。本物の兄ならば目の前に居るのだ。
ヴーヴーヴーヴー
「さ、さて、岳理さん、ランチでも食べて行かれませんか」
ヴーヴーヴーヴー
急に岳理の眼が冷ややかになる。
「あああ、マナーにしてなくてすみませっ……ああ!」
岳理は名探偵なスピードで、エプロンから携帯を盗むと、手を空高く持ち上げた。頭一個小さいみかどには、両手を伸ばしても届かない。
「お兄さん! 泥棒です! 助けて下さい!」
そう言うと、店長が携帯を奪い、画面を見る。
「『お父さん』……」
ピッと受話器を上げて、耳元に当てる。
「はい。こちらカフェ『アルジャーノン』です」
「あぁああ! お兄さんも何してるんですか!」
慌ててみかどは取り返すと、携帯に話しかけた。
「今、バイト中です!」
『皇汰をそそのかしたのはお前だろ!』
激怒しているが、みかどには何がなんだが話が分からない。
「何の事ですか」
『出来は悪くても惚けるのは一人前だな』
「…………」
首を傾げつつ返事に戸惑っていたら、また岳理に携帯を奪われ、スピーカーボタンを押された。
『皇汰の部屋から、皇汰の物が跡形も無く運び出されたと聞いた。真絢も接触禁止と弁護士が言ってきたぞ。私まで中学に行ったら門前払いだった。お前と話をするまで帰らないと言われたぞ』
「頭良いですね、皇汰くん」
「マセガキがっ」
父の言動に不信が募る。今日は忙しいと言いながら、皇汰の事なら中学まで行く。みかどの話は聞く様子もなかったのに、だ。そう思うとつい笑ってしまった。
『何を笑ってる!』
「で、いつならお時間頂けるんですか」
感情も込めず淡々と質問すると、少し間が合ってから答えた。
『土曜日の朝、三者面談を取りつける』
「お、親父とは話できた?」
「ええ 皇汰! いつの間に!」
「早くバター作ろうぜ、俺、お腹空いた」
岳理も平然と、綺麗になったカフェのテーブルに、冷蔵庫から取り出した生クリームを取り出す。



