「それにしても神楽さん、私お腹減りました…」



丁度夕食時だったのか辺りは美味しそうな匂いで充満していた。



『さて、どうしようかのぉ』



鳴りそうなお腹を押さえながらとぼとぼと歩いていた時だった。



『だれか助けて!』



ウサギ達の声が聞こえた時のように頭の中に声が響いた。



「神楽さん、誰かの声が聞こえる」



神楽さんは辺りを見渡すと、『あやつだな』と言って一匹の犬を指さした。



よく見ると犬はキョロキョロしながら吠えている。街の人は野良犬か何かと思っているのか相手にしていなかった。



急いで傍により「何かあったの?」と話しかける。自分の声が通じたと分かったのか犬は私の足の周りを走りながら、



『あっちで僕のご主人さまが大変なことになっているんだ!!』



そう言った。



「大変!助けに行かなくちゃ!!どこなの?」



『こっちだよ!』



そう言うと先に走り出す犬。見失わないように走って後を追った。



『助けに行ってどうするつもりじゃ?まだ力の使い方も分からんのに』



確かに私一人が言ったところでどうにもならないだろう。



「でも、見捨てられないよ!」