その男がいなくなったとも、体の震えが止まらない。もしもあのまま斎藤くんが来なかったら…っ
そう思うと、本当に自分の愚かさが恥ずかしくて顔も上げられない。スカートにポタポタとシミを作るそれをぬぐいながら、なんとか声を出そうとするものの、嗚咽に飲まれて何も出てこない。
お礼、しないといけないのに…っ、
「友達……では、なさそうだな。」
そうつぶやいた斎藤くんの声に、ゆっくりと顔を上げる。
彼はよいしょ、としゃがみこむと、わたしの顔を伺うように覗き込んだ。
「……大丈夫か?」
「っ……ぅん。」
かろうじて出した声はか細くて自分でも呆れてしまう。
自業自得ってこういうことを言うんだなって、改めて感じた。
自分が必要とされていない現実を見てムキになって、のこのここんな話に乗ってしまったこと。竜馬の言うことを聞かなかったこと。
本当に、わたしってダメなやつ。
竜馬に会わせる顔もない。
「立てるか?……って、無理だろうな。」
そう聞かれて腰を上げようとするものの、膝が笑ってうまく立てない。
「…っちょっとしたら立てると思うから…っ、バイト、戻って?」
泣いた顔を見られたくなくてうつむきがちにそういえば、
「んー。俺もちょうど休憩しようと思ってたところだし。」
そう言ってわたしの隣に足を投げ出す彼にまたもや呆気にとられる。
「だい、じょぶなの?」
「藤宮咲こそ、大丈夫なのか?」
真顔でそう尋ねられて、もう返す言葉がないわたしは、彼の言葉に甘えてしばらくここにいることにした。


