じゃあね、とカウンターで別れて、わたしは女子生徒に伝えられた通り奥の一室の扉をおそるおそる開けた。
もわもわとした熱気とガンガンと脳裏に響く音楽に、身体中が危険信号を出し始めていた。これだったら竜馬の言うこと聞いて大人しく帰ってればよかった…
「あ、来た来た!こっちこっち!」
メイクバッチリの女の子に手招きされて、初めてその子がクラスで喋った子だということに気がついた。
カラオケボックスに漂う香水の入り混じった臭いと、危ない空気に頭皮がピリピリする。こういうのにふなれているわたしは、ただただおろおろするばかり。
「隣来なよ…!」
その中のいかにもチャラそうな男性に声をかけられて近づいたものの、やはり落ち着かない。
「なんでそんな遠く座ってるんだよー。」
グイッと腕を引っ張られて、思わず固まる。
………お酒の臭い、する。
「ね、ねえ…」
斜め前で音楽にノッテいる彼女に囁く。
「男性の人たちって高校生だよね?」
「高校生もいるけど、その中の一人のお兄さんが友達連れてきたから、ハタチ超えている人もいるんじゃないかなあ。」
え……。
だんだんと状況を理解し始めたわたしの脳裏に、突然お父さんの顔がよこぎった。お父さんはわたしがこんなところに来ていると知ったらどう思うんだろう…。
悲しむかな。
いいや。
関心がないかもしれない。
そう思ったらスッと冷静になって…。
やっぱりどうでもよくなってしまった。


