普通だったら友達と盛り上がりながらわいわいと合コンの場所へ行くのだろうけれど、わたしはなぜだか一人で目的地へ向かっている。
今になってどうして了解してしまったんだろう、と、後悔していた。
やっぱりネズミがムキになったって仕方がないのに…。
なんでか最近すごく焦っている。置いて行かれないように、変われるように。
自分は変われる。変われた。そう言い聞かしてばかりだ。
「あれ…?斎藤くん?」
ふと前方を見れば、本当に眠そうに、パーカーのポケットに両手を突っ込んで、ぶらぶらと歩いている後ろ姿を発見した。
「斎藤くん…!」
「あ…。なんだっけ…藤宮、咲。」
フルネームでわたしを呼ぶ彼に苦笑しながら歩み寄る。
そして彼に近づくにつれて、いつも机に突っ伏している彼の高身長に圧倒された。
「わあ…背、高いね。」
「そー?」
小さくクスッと笑う彼は、教室の中にいるのと外ではだいぶ印象が変わった。
野球部らしくてゴツい見た目に似合わない柔らかな雰囲気とクシャッとした笑みを見て、これは、いつも寝てさえいなければ相当人気が出るのではないか、と思案した。
「今からどこ行くの?」
「んー、カラオケ。」
「えっ?合コン行くの?」
「合コン?…なんだそれ。バイト、そこでやってるから。」
なるほど…彼はこう見えてもアルバイトをしているのか。
ちゃんと仕事できるのかな。
「藤宮咲は?」
「えっ…ああ…カラオケ。」
どうしてか合コンに行くと伝えるのは気が引けた。
やっぱりそんなものに行くのには抵抗があったし、多少の羞恥も混じっていた。
こんなにも純粋そうな彼に、あまりそういう話はしたくなかった。
「一人?」
目を少しだけ見開く彼に、小さく笑って首を振る。友達とね、と伝えれば、そうかそうかって笑った。


