「ごめんね、本当に本当に助かる!今日の四時半南駅のカラオケ集合なんだけど、わかるかな…?あのゲームセンターの横の…」
まるで水中の中にいるかのように、彼女の声が薄れて聞こえてきたのは、きっとあいつのせい。
まるで睨んでるようにわたしを見ているんだから仕方ない。
「…えっと…。」
「あ、うん、わかった。」
そう答えれば、安心したように無邪気な微笑みを見せる彼女。可愛い顔立ちだから、きっと今まで笑っていればなんでも許されてきたような子なのだろうなあ…って、勝手に考えていた。
彼女らがいなくなると、一歩、二歩と近づいてくるあいつ。
「何言われた?」
「盗み聞きですか?」
ってからかう。
「何だよ。」
「なんでよ。」
「あいつら友達じゃねーだろ。」
「合コン。誘われたから、行くの。」
「バカだろ。どうせ人数合わせだろ。」
眉間にしわを寄せる竜馬に、少しだけムッとする。
「別にそれでいいし。」
「良くねーんだよ。」
「何が?」
「合コンってわかってんのか?」
「当たり前でしょ。恋人探しでしょ?」
「ヤりたい男が集まってくんだよ。」
「は?」
「とにかく行くな。」
竜馬はそれだけ言うとわたしに背を向けて教室を出て行った。
なんなのよ。
別にいいし。
行くし。
どうせ人数合わせだけど。
どうしてかムキになっている自分がいた。
あんたのことが好きなのに。
あんたは気づかないんだから。
わたしに彼氏ができてもどうせ何も思わないんだろうな…。


