結局わたしが口をはさむヒマなんてなかった。


斎藤君はさっきからボケーっとしてるし、竜馬は山本さんに話しかけられていてわたしの顔を見る時間さえなかった。

『ん』とか『ああ』とかしか言ってなかったけど、でも…悔しいよ。

みんな竜馬のことを怖がっているのかと思ってた。


だけど、意外とみんな…竜馬と話したがっている?


そう思ったら泣きたくなった。わたしだけの竜馬でいてほしい。赤いマフラーつけてふわって笑う、わたしだけをその綺麗な瞳に映す竜馬でいてほしい。


これって…やきもち?


ねえ、そうなのかな、竜馬。


「なあ。」


ふと声をかけられて驚く。


「なあってば。」


斎藤君がツン、とわたしの腕を突く。


え…この人って喋れたの?知らなかった…


日焼けした肌の奥でキラリと瞳が光る。あ、綺麗…


「これでいいの?」


「え、へっ!!」


変な声を上げたわたしに竜馬が怪訝そうに視線を向ける。


「終わったんだけど、これでいいん?」


眠たそうに目をこする彼の手元を見れば、ズラーッと文字が並んでいる。


「課題…終わったの!??!?」

「マジ?」

竜馬も驚いたように覗き込んでくる。